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長引く風邪に柴胡桂枝湯

「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「長引く風邪に柴胡桂枝湯」を公開しました!

柴胡桂枝湯とは?風邪の名残と胃腸症状が重なるときに使われる漢方薬

風邪がなかなか治りきらず、寒気や頭痛、関節痛が残っている。

それに加えて、食欲不振や吐き気、みぞおちの痛みまで出てきた。

このように、風邪の症状と胃腸の不調が同時に現れているときに用いられる代表的な漢方薬が「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」です。

柴胡桂枝湯は、風邪の初期に使われる「桂枝湯」と、風邪がこじれた段階に使われる「小柴胡湯」の考え方を組み合わせた処方です。

体の表面に残った不調と、少し内側に入り込んだ不調の両方を同時に整えるところに大きな特徴があります。

今回は、柴胡桂枝湯がどのような状態に適しているのか、配合されている生薬の役割や、小柴胡湯・桂枝湯との違いについて詳しく解説します。

柴胡桂枝湯とは?

柴胡桂枝湯は、中国の古典医学書『傷寒論』に記載されている歴史の古い漢方処方です。

名前の通り、柴胡を中心とする小柴胡湯の要素と、桂枝を中心とする桂枝湯の要素をあわせ持っています。

漢方では、病気がまだ体の表面に残っている「太陽病」と、少し内側へ進んだ「少陽病」の症状が同時にみられる状態を「太陽少陽併病」と表現します。

柴胡桂枝湯は、このように病気が一つの段階にきれいに分かれず、外側と内側の症状が混在しているときに用いられる処方です。

ポイントは「風邪症状+胃腸症状」

柴胡桂枝湯が適する状態では、風邪らしい症状だけでなく、胃腸の不調が同時に現れることが大きな特徴です。

例えば、

・微熱
・悪寒
・頭痛
・関節痛
・体のだるさ
・食欲不振
・吐き気
・みぞおちの痛み
・胸や脇腹の張り

などが組み合わさって現れます。

「風邪の初期症状はまだ残っているけれど、最近は胃までおかしくなってきた」

というような状態が、一つの分かりやすいイメージです。

「太陽」と「少陽」が重なった状態

風邪のひき始めでは、病邪はまだ体の表面にあると考えます。

この段階では、悪寒や頭痛、体の痛みなどが中心です。

しかし病気が少し進むと、症状は体の表面だけではなく、内側にも影響し始めます。

小柴胡湯が適する「少陽」の段階では、

・熱が上がったり下がったりする
・胸や脇腹が張る
・食欲が落ちる
・吐き気がする

といった症状が現れます。

柴胡桂枝湯では、この「太陽」と「少陽」の特徴が両方みられます。

つまり、

「外にも症状が残っている」
「内側にも不調が入り始めている」

という中間的で複雑な状態なのです。

お腹に現れる特徴的なサイン

柴胡桂枝湯では、腹部の所見も重要です。

代表的なのが、肋骨の下あたりに張りや抵抗感を感じる「胸脇苦満」です。

さらに、みぞおち付近の筋肉が緊張し、突っ張るような感覚や圧痛がみられることもあります。

小柴胡湯のような胸脇苦満に加えて、桂枝湯系の筋肉の緊張が重なっている点が特徴です。

漢方では、こうした腹部の状態も処方選びの大切な手がかりになります。

柴胡桂枝湯を構成する9つの生薬

柴胡桂枝湯は、主に次の9種類の生薬から構成されています。

・柴胡
・黄芩
・半夏
・人参
・桂枝
・芍薬
・甘草
・大棗
・生姜

それぞれが異なる役割を持ち、体の外側と内側の両方に働きかけます。

桂枝が体表の寒気や痛みに働く

「桂枝」は、体の表面を温め、血流や気の巡りを整えるために用いられる代表的な生薬です。

悪寒や頭痛、関節痛など、風邪の初期にみられる「表」の症状を和らげる方向に働きます。

桂枝湯にも含まれており、柴胡桂枝湯の「外側への働き」を担っている重要な生薬です。

柴胡と黄芩が内側のこじれを整える

「柴胡」と「黄芩」は、小柴胡湯の中心となる組み合わせです。

柴胡は、体の表面と内部の中間に停滞している不調を調整し、胸や脇腹の張りにも用いられます。

黄芩は、こもった熱や炎症を冷ます方向に働きます。

この二つによって、風邪が長引いて内側に残っている熱や不快感を整えていきます。

芍薬と甘草が痛みや緊張を和らげる

「芍薬」と「甘草」の組み合わせは、筋肉の緊張やけいれん性の痛みを和らげる目的でよく用いられます。

柴胡桂枝湯では、みぞおちや腹部の突っ張り、腹痛、体のこわばりなどを和らげる役割を担います。

風邪の不調だけでなく、お腹の痛みが目立つ場合にも応用される理由の一つです。

半夏と生姜が吐き気を整える

吐き気や胃のむかつきに重要なのが「半夏」と「生姜」です。

半夏は、上へ逆流した胃の気を下ろし、吐き気や胃のつかえを整えるために用いられます。

生姜は胃を温めながら、半夏の働きを助けます。

柴胡桂枝湯が「風邪の薬」でありながら胃腸症状にも対応できるのは、この組み合わせが入っているためです。

人参と大棗が胃腸と体力を支える

病気が長引くと、食欲が落ち、体力も徐々に消耗していきます。

そこで「人参」と「大棗」が胃腸を支え、体力の回復を助けます。

柴胡桂枝湯は、単に邪気を追い出すだけではなく、弱ってきた体を守りながら整える構成になっています。

そのため、体力が中等度からやや虚弱な方に使われることがあります。

桂枝湯との違い

桂枝湯は、

・悪寒
・発熱
・自然に汗が出る
・頭痛
・体のだるさ

など、風邪のひき始めの「表虚証」に用いられる処方です。

胃腸症状が全くないわけではありませんが、基本的には体表の症状が中心です。

一方、柴胡桂枝湯では、そこに

・食欲不振
・吐き気
・胸脇苦満
・みぞおちの痛み

など、少陽の症状が加わります。

つまり、桂枝湯よりも風邪が一段階こじれている状態と考えると分かりやすいでしょう。

小柴胡湯との違い

小柴胡湯は、

・往来寒熱
・胸脇苦満
・食欲不振
・吐き気
・口の苦さ

など、少陽病の症状が中心です。

一方、柴胡桂枝湯では、小柴胡湯のような内側の症状に加えて、

・悪寒
・頭痛
・関節痛
・体表の痛み

など、まだ「表」の症状が残っています。

つまり、

「小柴胡湯だけでは内側に寄りすぎる」
「桂枝湯だけでは外側に寄りすぎる」

という中間的な状態に、柴胡桂枝湯が選ばれることがあります。

風邪以外にも応用されることがある

柴胡桂枝湯は、風邪の中期だけに使われる処方ではありません。

胸脇苦満や胃腸症状、筋肉の緊張、ストレスによる不調などを目安に、慢性的な胃腸症状や腹痛などに応用されることがあります。

ただし、「胃炎だから柴胡桂枝湯」「ストレスがあるから柴胡桂枝湯」と病名だけで決めるわけではありません。

漢方では、胸脇苦満、腹部の緊張、寒熱、体力などを総合的に見て処方を選びます。

自己判断で長く飲み続けないことも大切

柴胡桂枝湯には、柴胡や黄芩、甘草などが含まれています。

体質や併用薬によっては注意が必要で、漫然と自己判断で長期間服用するのはおすすめできません。

また、風邪が長引き、高熱が続く、強い腹痛がある、繰り返し吐く、水分が取れない、呼吸が苦しいといった症状がある場合は、別の病気が隠れている可能性があります。

そのような場合は、漢方薬だけで様子を見ず、医療機関を受診することが大切です。

まとめ

柴胡桂枝湯は、風邪の表面的な症状と、少し内側に入り込んだ胃腸症状が同時にみられるときに用いられる代表的な漢方薬です。

特に、

・微熱や悪寒が残っている
・頭痛や関節痛がある
・食欲がない
・吐き気がする
・みぞおちが痛む
・胸や脇腹が張る

といった状態が一つの目安になります。

桂枝で体表の寒気や痛みを整え、柴胡と黄芩で内側のこじれを調整し、半夏と生姜で吐き気を抑え、芍薬と甘草で筋肉の緊張を和らげる。

さらに、人参と大棗が胃腸と体力を支えます。

このように、体の外側と内側を同時に整えるところが、柴胡桂枝湯の大きな特徴です。

風邪がどの段階にあり、どの症状が残っているのかを丁寧に見極めることが、自分に合った漢方薬を選ぶための重要なポイントなのです。

西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。

自分の症状にどのような漢方薬が合っているか、漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦(臨床歴20年)

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦(臨床歴20年)

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。

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