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のぼせるのに手足は冷たい方へ【柴胡桂枝乾姜湯】

「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「のぼせるのに手足は冷たい方へ【柴胡桂枝乾姜湯】」を公開しました!

柴胡桂枝乾姜湯とは?冷えとのぼせ、動悸や不眠が重なる虚弱タイプに使われる漢方薬

ストレスや疲れが続き、手足は冷たいのに顔や頭だけが熱く感じる。

さらに、動悸や不眠、イライラ、寝汗なども重なっている。

このように、体が弱っているにもかかわらず、上半身には熱がこもるような複雑な状態に用いられる代表的な漢方薬が「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」です。

柴胡桂枝乾姜湯は、体力が低下し、冷えや疲れが強く、精神的にも過敏になっている方に使われることが多い処方です。

「冷えているのにのぼせる」「疲れているのに眠れない」という、一見すると矛盾した症状を同時に整えていくところに大きな特徴があります。

今回は、柴胡桂枝乾姜湯がどのような状態に適しているのか、特徴的な「臍上悸」や配合されている生薬の役割、加味逍遙散や柴胡加竜骨牡蛎湯との違いについて詳しく解説します。

柴胡桂枝乾姜湯はどんな人に使われる?

柴胡桂枝乾姜湯が適するのは、比較的体力が低下している方です。

特に目安となるのが、

・手足や下半身が冷える
・顔や頭はのぼせる
・寝汗をかく
・動悸がする
・息切れしやすい
・神経が過敏になっている
・イライラしやすい
・不安感がある
・眠りが浅い
・口や喉が乾く

といった症状です。

全体としては「冷えて弱っている」のに、上半身だけに熱が偏っている。

漢方では、こうした寒熱が入り混じった状態を丁寧に見極めて処方を選びます。

ポイントは「上熱下寒」

柴胡桂枝乾姜湯の状態を理解するうえで分かりやすいのが、「上熱下寒」という考え方です。

これは文字通り、

「上半身には熱があるのに、下半身は冷えている」

状態を意味します。

例えば、

顔はほてるのに足先は冷たい。
頭がカッカするのに、お腹は冷える。
寝汗をかくのに、体全体としては寒がり。

といった状態です。

体のエネルギーや水分の巡りが乱れることで、熱が上半身に偏り、下半身には十分な温かさが届かなくなっていると考えます。

柴胡桂枝乾姜湯は、このアンバランスを整えることを得意とする処方です。

特徴的なサイン「臍上悸」とは?

柴胡桂枝乾姜湯を考えるうえで、古くから知られている特徴的なサインが「臍上悸(さいじょうき)」です。

これは、おへその上あたりで脈がドクドクと強く感じられる状態をいいます。

本人が、

「お腹の中が脈打つ感じがする」
「みぞおちからおへその上がドキドキする」

と感じることもあります。

漢方では、体力の低下や水分代謝の乱れ、精神的な緊張などが重なることで現れる所見の一つとして考えられています。

ただし、臍上悸があるだけで柴胡桂枝乾姜湯と決まるわけではありません。

冷え、のぼせ、動悸、不眠、寝汗、口渇など、全身の症状を合わせて判断することが重要です。

柴胡桂枝乾姜湯を構成する生薬

柴胡桂枝乾姜湯は、主に次の7種類の生薬から構成されています。

・柴胡
・黄芩
・桂枝
・乾姜
・栝楼根
・牡蛎
・甘草

この構成を見ると、「熱を冷ます生薬」と「体を温める生薬」が同時に入っていることが分かります。

一見すると正反対ですが、この組み合わせこそが、冷えとのぼせが同時に存在する複雑な状態に対応できる理由です。

柴胡と黄芩が上半身のこもった熱を整える

「柴胡」と「黄芩」は、柴胡剤を代表する重要な組み合わせです。

柴胡は、体の中間部分に停滞した気や熱を整え、精神的な緊張や胸のつかえなどにも用いられます。

黄芩は、こもった熱や炎症を冷ます方向に働きます。

この二つが、上半身に偏った熱やイライラ、落ち着かなさなどを調整します。

桂枝と乾姜が体の内側を温める

柴胡桂枝乾姜湯の大きな特徴が、「桂枝」と「乾姜」です。

桂枝は、体の表面や血流を温め、気の巡りを整えます。

乾姜は、生姜を乾燥させた生薬で、体の内側をしっかり温める力があります。

そのため、

・手足の冷え
・お腹の冷え
・全身の冷え
・体力低下に伴う寒さ

などに働きかけます。

上半身の熱を柴胡・黄芩で整えながら、冷えている部分を桂枝・乾姜で温める。

この「冷ます」と「温める」を同時に行うところが、柴胡桂枝乾姜湯の大きな特徴です。

栝楼根が乾きを潤す

「栝楼根(かろこん)」は、喉や口の渇きなどに使われる生薬です。

体に熱がこもったり、寝汗をかいたりすると、体内の水分が消耗しやすくなります。

その結果、

・口が乾く
・喉が乾く
・皮膚が乾燥する

といった症状が現れることがあります。

栝楼根は、こうした失われた潤いを補う方向に働きます。

柴胡桂枝乾姜湯が、単に冷えを温めるだけではなく、「熱によって消耗した潤い」まで意識した処方になっている点は非常に特徴的です。

牡蛎が動悸や不安感を落ち着かせる

「牡蛎(ぼれい)」は、カキの殻を加工した生薬です。

漢方では、精神的な興奮を鎮めたり、動悸や不安感を落ち着かせたりする目的で使われます。

また、汗が必要以上に漏れ出る状態を引き締める方向にも働くと考えられています。

そのため、

・寝汗
・動悸
・不安感
・落ち着かない
・眠れない

といった症状に関係します。

柴胡桂枝乾姜湯が、身体的な冷えだけでなく、精神的な不調にも使われる理由の一つです。

甘草が処方全体をまとめる

「甘草」は、さまざまな漢方処方に登場する生薬です。

生薬同士の働きを調和させ、胃腸を守り、筋肉の緊張を和らげる方向に働きます。

柴胡桂枝乾姜湯では、温める生薬、冷ます生薬、精神を落ち着かせる生薬など、性質の異なる生薬が組み合わされています。

甘草は、それらをうまくまとめる調整役です。

加味逍遙散との違い

冷えとのぼせ、イライラなどに使われる漢方薬として「加味逍遙散」もよく知られています。

加味逍遙散では、

・肩こり
・イライラ
・気分の波
・月経に関連した不調
・のぼせ
・冷え

などがみられることがあります。

一方、柴胡桂枝乾姜湯では、より体力が低下しており、

・強い冷え
・疲労感
・動悸
・寝汗
・不眠
・臍上悸
・口や喉の渇き

などが目立つ傾向があります。

つまり、同じ「のぼせと冷え」があっても、体力や精神状態、腹部の所見などによって使い分けます。

柴胡加竜骨牡蛎湯との違い

もう一つ比較されることが多いのが「柴胡加竜骨牡蛎湯」です。

柴胡加竜骨牡蛎湯は、

・強い不安
・イライラ
・不眠
・動悸
・驚きやすい
・便秘

などに用いられることがあります。

一般的には、柴胡桂枝乾姜湯よりも体力があり、精神的な緊張や興奮が強いタイプに選ばれることが多い処方です。

それに対して柴胡桂枝乾姜湯は、

「疲れている」
「冷えている」
「でも上半身はのぼせる」

という、より虚弱で消耗した状態が特徴です。

精神症状が似ていても、体力の強弱が処方選びの重要なポイントになります。

「自律神経の乱れ」だけで決めないことが大切

現代では、のぼせ、冷え、動悸、不眠、イライラなどをまとめて「自律神経の乱れ」と表現することがあります。

しかし漢方では、同じような自律神経症状でも、

・体力はあるのか
・冷えが強いのか
・熱が強いのか
・口渇があるのか
・寝汗があるのか
・胸脇苦満があるのか
・お腹の拍動が強いのか

などを細かく確認します。

「自律神経に効く漢方だから」という理由だけで選ぶのではなく、その人の体質や症状の組み合わせを見極めることが大切です。

動悸や息切れが強い場合は医療機関へ

柴胡桂枝乾姜湯は、動悸や不安感などにも用いられることがありますが、すべての動悸が自律神経や体質によるものとは限りません。

心臓の病気、不整脈、貧血、甲状腺疾患などでも、動悸や息切れが現れることがあります。

特に、

・突然強い動悸が始まった
・胸が痛む
・呼吸が苦しい
・意識が遠のく
・強いめまいがある

といった場合は、漢方薬だけで様子を見ず、医療機関を受診することが大切です。

また、柴胡桂枝乾姜湯には甘草が含まれるため、他の甘草含有漢方薬との重複や長期服用にも注意が必要です。

まとめ

柴胡桂枝乾姜湯は、体力が低下し、冷えとのぼせ、動悸、不眠、寝汗などが同時に現れている方に用いられる代表的な漢方薬です。

特に、

・手足や下半身が冷える
・頭や顔はのぼせる
・寝汗をかく
・動悸や不安感がある
・眠りが浅い
・口や喉が乾く
・おへその上で拍動を感じる

といった状態が一つの目安になります。

柴胡と黄芩で上半身の熱を整え、桂枝と乾姜で冷えた体を温め、栝楼根で潤いを補い、牡蛎で動悸や精神的な緊張を落ち着かせる。

この「冷ます・温める・潤す・鎮める」という複数の働きを一つの処方の中で組み合わせていることが、柴胡桂枝乾姜湯の大きな特徴です。

同じようなのぼせや不眠でも、加味逍遙散や柴胡加竜骨牡蛎湯など適する処方は異なります。

症状だけでなく、体力、冷えの程度、腹部の状態などまで丁寧に見極めることが、自分に合った漢方薬を選ぶための大切なポイントです。

西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。

自分の症状にどのような漢方薬が合っているか、漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦(臨床歴20年)

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦(臨床歴20年)

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。

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