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脇腹が張って、むくみもある方へ【柴苓湯】
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「脇腹が張って、むくみもある方へ【柴苓湯】」を公開しました!
柴苓湯とは?炎症と水分代謝の乱れを同時に整える漢方薬
吐き気がして食欲がない。
喉は渇くのに尿の量が少なく、顔や手足はむくんでいる。さらに、水っぽい下痢まで続いている。
このように「こじれた不調」と「水分バランスの乱れ」が同時に起こっているときに用いられる代表的な漢方薬が「柴苓湯(さいれいとう)」です。

柴苓湯は、一つの処方の中に二つの有名な漢方薬の考え方が組み合わされた「合方」です。
その二つとは、「小柴胡湯」と「五苓散」。
いわば二つの処方が合体し、それぞれの得意分野を一つにした漢方薬です。
今回は、柴苓湯がどのような状態に適しているのか、「胸脇苦満」や水分代謝の乱れといった特徴的なサイン、小柴胡湯・五苓散との違いについて詳しく解説します。
柴苓湯は「小柴胡湯+五苓散」
柴苓湯を理解するうえで最も大切なのが、その成り立ちです。
柴苓湯は、
「小柴胡湯」+「五苓散」
という二つの処方を組み合わせた漢方薬です。

小柴胡湯は、病気がこじれて体の表面と内部の中間に不調が残った「半表半裏」の状態を整える代表的な処方です。

一方、五苓散は、体内の水分バランスを整える代表的な処方です。
この二つを組み合わせることで、
「こじれた熱や炎症を整える」
「余分な水分をさばく」
という二つの働きを同時に行えるようになっています。

ポイントは「少陽病+水分代謝の乱れ」
柴苓湯が適する状態を東洋医学的に考えると、「少陽病」に水分代謝の異常が加わった状態と捉えると分かりやすいでしょう。
少陽病では、
・胸や脇腹が張る
・食欲がない
・吐き気がする
・口が苦い
・熱が出たり下がったりする
などの症状が現れます。
そこに、
・喉が渇く
・尿量が減る
・むくむ
・水っぽい下痢が出る
・胃の中に水がたまる
といった水分代謝の乱れが加わります。
つまり柴苓湯は、「小柴胡湯だけでも足りない」「五苓散だけでも足りない」という複雑な状態に対応する処方なのです。

「喉が渇くのに尿が少ない」が重要なサイン
柴苓湯を考えるうえで注目したいのが、水分の偏りです。
例えば、
「水を飲みたいほど喉が渇くのに、尿があまり出ない」
という一見矛盾した状態があります。
これは単純な「水分不足」とは限りません。
漢方では、体内に水分が存在していても、それが必要な場所にうまく巡らず、一部に偏って停滞していると考えることがあります。
その結果、口や喉は乾いているのに、別の場所ではむくみが起こる。
あるいは、尿として十分に排泄されず、水っぽい下痢として出てしまう。
このような水分の「量」だけではなく「巡り」の問題を整えるのが、五苓散の役割です。
「胸脇苦満」が小柴胡湯のサイン
柴苓湯では、水分症状だけでなく「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」も重要です。
胸脇苦満とは、肋骨の下から脇腹にかけて張りや抵抗感があり、押すと不快感や痛みを感じる状態をいいます。
本人としては、
・胸から脇腹が張る
・脇腹が重苦しい
・肋骨の下がつかえる
などと感じることがあります。
これは、小柴胡湯が適する状態を判断する代表的な腹証の一つです。
柴苓湯では、この胸脇苦満に、水分代謝の異常が重なっていることが重要になります。

お腹がチャポチャポする「胃内停水」
もう一つ、水分の停滞を考える手がかりとなるのが「胃内停水」です。
胃の中に余分な水分が停滞している状態で、診察時にみぞおち付近を軽く揺らしたり叩いたりすると、チャポチャポと振水音が聞こえることがあります。
このような状態では、
・胃が重い
・吐き気がする
・食欲がない
・水分を取ると胃がもたれる
といった症状を伴うこともあります。
胸脇苦満という「少陽」のサインと、胃内停水という「水」のサイン。
この二つが同時にみられることが、柴苓湯を考える重要なポイントになります。

小柴胡湯が「こじれ」を整える
柴苓湯の一つ目の柱が、小柴胡湯です。
小柴胡湯には、
・柴胡
・黄芩
・半夏
・人参
・甘草
・大棗
・生姜
が配合されています。
中心となる柴胡と黄芩が、半表半裏にこもった熱を整えます。
半夏は吐き気や胃のつかえに働き、人参・甘草・大棗・生姜などが胃腸を支えながら処方全体を調整します。
そのため、単に熱を冷ますだけでなく、食欲不振や吐き気を伴う「こじれた状態」に対応できるのです。

五苓散が水分バランスを整える
もう一つの柱が、五苓散です。
五苓散は、
・沢瀉
・猪苓
・茯苓
・白朮
・桂枝
から構成される代表的な利水剤です。
なかでも沢瀉、猪苓、茯苓、白朮などが、体内に偏っている余分な水分をさばき、水分バランスを整える方向に働きます。
ここで重要なのは、単純に「尿をたくさん出せばよい」という考え方ではないことです。
五苓散は、漢方では体内の水分の偏りを調整する処方として捉えられており、
・むくみ
・尿量減少
・水っぽい下痢
・吐き気
・口渇
など、一見すると正反対に見える水分症状に用いられることがあります。

柴苓湯が複雑な症状に対応できる理由
柴苓湯の面白いところは、「炎症」と「水分」の両方に対応していることです。
小柴胡湯によって、
「病気がこじれて残っている状態」
を整える。
五苓散によって、
「体内で偏ってしまった水分」
を整える。
この二つが組み合わされているため、
・吐き気
・食欲不振
・胸脇苦満
・口渇
・尿量減少
・むくみ
・水様性の下痢
など、複数の症状が同時に現れている状態に用いられるのです。
五苓散との違い
柴苓湯と五苓散を使い分けるポイントの一つが、「少陽」の症状があるかどうかです。
五苓散では、
・喉が渇く
・尿量が少ない
・むくむ
・水っぽい下痢
・吐き気
・めまい
・頭痛
など、水分代謝の異常が中心です。
一方、柴苓湯では、こうした症状に加えて、
・胸脇苦満
・食欲不振
・口の苦さ
・熱が出たり下がったりする
など、小柴胡湯が必要となるような「こじれ」の症状がみられます。
水分の問題が中心なら五苓散。
そこに少陽病の特徴まで加わっているなら柴苓湯。
これが一つの使い分けの目安になります。
小柴胡湯との違い
反対に、小柴胡湯との違いは「水分代謝の異常」があるかどうかです。
小柴胡湯では、
・胸脇苦満
・往来寒熱
・食欲不振
・吐き気
・口の苦さ
などが中心になります。
ここに、
・むくみ
・尿量減少
・強い口渇
・水っぽい下痢
・胃内停水
などが加わった場合、柴苓湯が検討されます。
つまり柴苓湯は、
「小柴胡湯の証」+「五苓散の証」
が重なったときに、その特徴を最も発揮する処方なのです。

「合方」という漢方ならではの考え方
柴苓湯は、漢方における「合方」の分かりやすい例です。
一つの処方では対応しきれない複雑な状態に対して、二つの処方の特徴を組み合わせる。
まさに、それぞれ異なる能力を持った二つの処方が“合体”したような考え方です。
ただし、単純に漢方薬を二種類自己判断で一緒に飲めばよいという意味ではありません。
漢方薬を重複して服用すると、同じ生薬を必要以上に摂取してしまう場合があります。
合方には処方としての考え方や配合量がありますので、自己判断で複数の漢方薬を組み合わせることは避けましょう。
むくみや尿量減少は病気のサインにもなる
柴苓湯は、むくみや尿量減少などにも用いられることがありますが、こうした症状には注意が必要です。
むくみや尿量の減少は、腎臓、心臓、肝臓などの病気でも起こることがあります。
また、激しい下痢や嘔吐によって脱水が起きている場合にも尿量は減少します。
特に、
・急激にむくみが強くなった
・息苦しさを伴う
・尿が極端に少ない、または出ない
・嘔吐や下痢が激しく水分を取れない
・強い腹痛や高熱がある
といった場合は、漢方薬だけで様子を見ず、医療機関を受診することが大切です。
また、柴苓湯には甘草が含まれるため、他の甘草含有製剤との重複や長期服用にも注意が必要です。
まとめ
柴苓湯は、小柴胡湯と五苓散を組み合わせ、「こじれた不調」と「水分代謝の乱れ」を同時に整える漢方薬です。
特に、
・吐き気がある
・食欲がない
・胸や脇腹が張る
・喉が渇く
・尿量が少ない
・顔や手足がむくむ
・水っぽい下痢がある
・胃の中に水がたまった感じがする
といった状態が一つの目安になります。
小柴胡湯で半表半裏のこじれを整え、五苓散で体内の水分バランスを調整する。
この二つの働きをあわせ持っていることが、柴苓湯の最大の特徴です。
水分症状だけなら五苓散、胸脇苦満や吐き気など少陽病の症状だけなら小柴胡湯、その両方が重なっている場合には柴苓湯というように、症状の組み合わせを丁寧に見極めることが大切です。

漢方では一つの症状だけを見るのではなく、体のどこで、どのような不調が同時に起きているのかを捉えることが、自分に合った処方を選ぶ重要なポイントなのです。
西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
自分の症状にどのような漢方薬が合っているか、漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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