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わけもなくイライラ・不安【加味逍遙散】
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「わけもなくイライラ・不安【加味逍遙散】」を公開しました!
加味逍遙散とは?更年期のイライラ・不安・のぼせに使われる漢方薬
わけもなくイライラしたり、急に不安になったり。
その一方で、体は疲れやすく、肩もこる。
日によって症状が変わるので、どこに相談すればよいのかもわからない。
このような複雑な不調に用いられる漢方薬が「加味逍遙散(かみしょうようさん)」です。
体力が落ち気味で、精神的なストレスを感じやすい方に向く処方で、更年期や月経トラブル、自律神経の乱れからくる不調に広く使われています。

日によって変わる不調「不定愁訴」
加味逍遙散が向くのは、ひとつの症状だけがはっきり出ているときではありません。
顔ののぼせやホットフラッシュ、突然のイライラ、急な不安感、気分の落ち込み、肩こり、手足の冷え、どっとくる疲労感。
こうした症状が日替わりで現れたり、いくつも重なったりする状態を、漢方では「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼びます。
もつれた糸のように、原因と症状がからまり合っているのが特徴です。

加味逍遙散のアプローチは「3つ同時」
漢方では、症状をひとつずつ追いかけるのではなく、体全体をひとつのバランスとして捉えます。
加味逍遙散が行うのは、次の3つを同時に整えることです。
・気(エネルギー)を巡らせる
・血(栄養と潤い)を補う
・こもった熱を冷ます
ストレスで気が滞ると、摩擦熱のように体の中に熱がこもります。
さらに、心と体の土台となる血が不足すると、その熱を冷ましきれなくなります。
この3つがからみ合って起きるのが、複雑な不調の正体だと考えます。


10種類の生薬でつくる「特製ブレンド」
加味逍遙散は、10種類の生薬を絶妙なバランスで組み合わせた処方です。
それぞれの生薬が役割を分担し、ひとつのチームのように働きます。

①気を巡らせる ─ 柴胡と薄荷
まず、ストレスで滞った気の流れをスムーズにするのが「柴胡(さいこ)」と「薄荷(はっか)」です。
柴胡が滞った気をダイナミックに動かし、薄荷がスーッと爽やかな風を吹き込みます。
ふさぎ込んだ心に新鮮な空気を入れるような働きで、気分の落ち込みやイライラを解きほぐす中心的な役割を担います。

②血を補う ─ 当帰と芍薬
次に、栄養や潤いのもとである「血(けつ)」を補うのが「当帰(とうき)」と「芍薬(しゃくやく)」です。
漢方でいう血は、単なる血液ではなく、心と体の「潤いと栄養」の源を指します。
当帰と芍薬がペアになることで不足した血を補い、精神を内側から安定させます。
栄養が隅々まで行き渡ることで、急な不安感や疲労感がやわらぎます。

③こもった熱を冷ます ─ 山梔子と牡丹皮(「加味」の正体)
加味逍遙散の最大の特徴は、名前に「加味」とある通り、ベースとなる処方に二つの生薬が加えられている点です。
それが、体の余分な熱を冷ます働きを持つ「山梔子(さんしし)」と「牡丹皮(ぼたんぴ)」です。
ベースとなる「逍遙散(しょうようさん)」にこの二つを加えたものが、加味逍遙散です。
燃え上がる炎にサッと水を打つように、のぼせやホットフラッシュ、焦燥感といった熱症状を鎮めてくれます。


④効き目を支える土台 ─ 白朮と茯苓
どんなに良い成分でも、吸収する胃腸が弱っていては効きません。
「白朮(びゃくじゅつ)」と「茯苓(ぶくりょう)」が胃腸の働きを助け、余分な水分を取り除きます。
さらに生姜と甘草が加わり、薬全体をしっかり受け止める土台をつくります。
胃腸への優しさも、このレシピに最初から組み込まれているのです。

「逍遙」という名前に込められた意味
「逍遙」とは、気ままに散歩することを意味する言葉です。
心と体が何にも縛られず、のびのびと解放された状態を表しています。
症状を「押さえ込む」のではなく、あなたが本来持っている「自由で穏やかなリズム」を取り戻すための名前だといえます。

婦人科三大漢方薬の使い分け
似たような症状に使う漢方薬として、次のようなものがあります。
・加味逍遙散
疲れやすく、イライラやのぼせが混在する方へ
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
色白で冷え症、貧血気味の方へ
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
がっしり体型で、赤ら顔や下腹部の張りがある方へ
加味逍遙散は、特に精神的な不調や熱っぽさが混在する方に選ばれます。

こんな方に向いています
・体力が中くらい、または落ち気味の方
・気分の浮き沈みが大きく、イライラしやすい方
・のぼせやホットフラッシュがある方
・日によって症状が変わる方
複雑な不調は、あなたの心がけのせいではありません。
気ままに散歩するような「逍遙」の心へ。加味逍遙散は、心身のバランスを優しく整えるお守りのような処方です。

服用上の注意
加味逍遙散には甘草が含まれています。
長期間の連用や、甘草を含むほかの漢方薬との併用によって、むくみ、血圧の上昇、手足のだるさ(偽アルドステロン症)などが起こることがあるため注意が必要です。
また、体質に合わない場合は胃の不快感が出ることもあります。
症状が続く場合は医療機関での確認も大切
更年期に似た症状は、ほかの病気が原因で起きていることもあります。
特に、
・不正出血がある
・強い動悸や息切れをともなう
・気分の落ち込みが重く、日常生活に支障が出ている
・体重が急に増減した
といった場合には、医療機関で確認することが大切です。
甲状腺の病気や貧血、うつ病などが隠れていることもあるため、自己判断せず専門家にご相談ください。
まとめ
加味逍遙散は、気を巡らせ、血を補い、こもった熱を冷ますという3つの働きを同時に行う漢方薬です。
日によって変わる複雑な不調に、体全体のバランスから寄り添います。
穏やかな毎日を取り戻すための、お守りのような一処方です。

西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
自分の症状にどのような漢方薬が合っているか、漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。


