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漢方コラム

秋に向けた体調管理と漢方の知恵

はじめに

夏の暑さがようやく落ち着き、空気が澄んでくるとともに感じられる秋の気配。
虫の声や空の色、日差しの角度など、自然の移ろいにふと心が和む季節です。しかし一方で、「毎年秋になると体が重く感じる」「朝起きるのがつらくなった」「なんだか気持ちが沈む」そんな声も多く聞かれます。

季節の変わり目は、身体にも心にも知らず知らずのうちに負担がかかっています。特に秋は、夏の疲れが表面化しやすく、乾燥や冷えによる不調が出始める時期でもあります。

この記事では、東洋医学の視点を踏まえながら、秋の体調管理に役立つ知恵や、生活に取り入れやすい習慣についてお届けします。

なぜ秋に体調を崩しやすいのか?

秋は、一日の寒暖差が大きくなる季節です。日中は暖かくても、朝晩は急に冷え込むことがあり、体温調節を担う自律神経に大きな負担がかかります。さらに、夏に受けた「隠れ疲労」が蓄積しており、それが表面化しやすくなるのもこの時期でもあります。

加えて、湿度が下がって空気が乾燥しやすくなるため、喉の痛みや肌荒れ、便秘など、乾燥に関連する不調が起きやすくなります。

また、日照時間が短くなることで、「セロトニン(幸せホルモン)」の分泌量が減り、気分の落ち込みが強くなることも。気温や湿度、日照など、さまざまな自然環境の変化が心身に影響を与える時期と言えるでしょう。

漢方で考える体質と原因

夏ではなく、秋に体調を崩すことを「秋バテ」と呼びます。
「秋バテ」は、夏の暑さや湿気、冷房による内臓の冷えなどが原因で、秋になってから体がだるくなる、疲労感が取れない、食欲がないなどの不調が続く状態を指します。

また、東洋医学では、秋は「肺」と「大腸」の働きと深く関わる季節とされています。肺は呼吸だけでなく、体の潤いを保ち、免疫力にも関係する臓器。一方の大腸は、老廃物の排出を担い、体内環境を整える役割を果たします。

秋は空気の乾燥により、これらの臓器が弱まりやすくなります。漢方の考えでは、このような季節の変化に合わせて「体質を整える」ことが重要とされます。

漢方でよく言われる原因には主に以下があります:

  • 気虚(ききょ):暑さや湿気・冷たいものによって消耗した“気”が回復しにくい体質。疲れやすさや息切れ、倦怠感が特徴。
  • 脾胃(ひききょ・脾胃の弱まり):胃腸の機能低下、消化吸収能力の低さ。冷たいものや生ものの過剰摂取・偏った食生活が影響する。
  • 乾燥(肺陰虚・肺の働きの低下):空気の乾燥から喉や肺が乾きやすく、咳や喉の違和感、咳が出やすくなる、肌がかゆくなるなどの症状。
  • 寒暖差や気圧変化の影響:朝夕の冷え込みや日中との気温差、気圧の変化によって自律神経が乱れ、眠りが浅くなったり、だるさや頭痛を感じたりすることがあります。

これらを意識して、潤いを補い、体を冷やさない、巡りをよくする生活がポイントとなります。

秋バテ・不調を防ぐ養生法

以下のような方法を日常に取り入れることで、「秋に向けた体調管理」がぐっと実践しやすくなります。そして、秋を乗り越えて冬を迎えるための準備期間として生活することができます。

食養生(食事で整える)

  • 旬の食材を活かす:かぼちゃ、さつまいも、きのこ(シイタケ・しめじ等)、根菜類は「気」を補い、体を温めるのに適しています。
  • 潤いを与える食材を加える:白きくらげ・梨・ヨーグルト・豆腐など、水分を保ちやすい食材を取り入れて乾燥対策。
  • 消化に負担をかけない調理を心がける:冷たいものや油もの・生ものを避け、温かくやわらかく調理する。雑穀や発酵食品も腸を整える助けになります。

生活習慣で整える

  • 規則正しい生活リズム:毎日同じ時間に起き、睡眠時間を確保する。寝る前のスマホなど強い光の使用は控える。
  • 冷えを防ぐ工夫:朝晩の冷えに備えて重ね着や羽織、重視したいのは腹部・足元を温めること。半身浴などで体をじんわり温める。
  • 適度な運動とストレッチ:軽いウォーキングやストレッチ、深呼吸などで血の巡りを良くし、身体の滞りを解消する。

精神・メンタルのケア

  • 心の落ち込みを感じたら、香りの良いお茶をゆっくり味わったり、好きな音楽を聴いたり、瞑想や呼吸法を取り入れる。
  • セロトニンの分泌を促すため、日中の自然光を浴びる工夫を。短時間でも散歩をするなど、光に触れることは気分の維持につながります。

漢方の知恵を日常に活かす工夫

漢方薬を服用する前に、まずは自分の体質を知ることが大切です。そして、以下のような方法で漢方の知恵を取り入れてみましょう。

  • ツボ押し:秋の不調に効くツボとして、足三里/中脘/太淵/湧泉などが挙げられます。息を吐くときに押し、吸うときに力を抜くなどリラックスした状態で。
  • 漢方の処方と相談:自分の症状(疲れやすさ・胃の張り・乾燥・冷えなど)に応じて、薬剤師または漢方専門医に相談。体質によって処方が異なるため、オーダーメイドのような対応が望ましい。
  • 漢方的飲み物や薬膳スープ:朝に温かいお茶を飲む/生姜や薬草を入れたスープを夜に摂るなど、体を内側から温め潤す工夫を。干しきのこや干しフルーツを使った薬膳風のおやつもおすすめ。

秋に気づく更年期の症状

秋は自然の変化を感じながら暮らす豊かな季節でありながら、身体と心にとっての負荷が隠れている季節でもあります。特に30代以降、更年期を意識し始める年代にとって、毎年繰り返す体調不良を軽く見ないことが大切です。

参照「更年期症状・障害に関する意識調査」について(厚生労働省)

また、夏であれば「夏だからかな?」と感じていた症状が実は慢性的な疲れや負担となっていることに気付かされるかもしれません。大切なことは、日々自分の体に向き合い、変化に気付くことです。

  1. 自分の体質(気虚・脾胃弱・乾燥・冷えなど)を知る
  2. 食事と生活習慣を整える:旬の食材・温かい調理・十分な睡眠
  3. 精神面にも配慮:早寝早起き・リラックス・光を浴びる時間を持つ
  4. 漢方の知恵を取り入れる:ツボ・薬膳・相談
  5. 症状が重いときは無理をせず、専門家に相談する

だんだん日照時間が短くなるこの季節、この夜の時間を活かして、日記を書いたり、静かな音楽を聴いたり、香りの良いアロマを焚いて過ごすことは、心を穏やかに整えるのに役立ちます。

心の疲れは、体にも影響を及ぼします。特に秋は「肺」と関係が深い季節であり、悲しみや寂しさといった感情が現れやすいともいわれています。心に優しい時間を意識して取り入れてみることも、秋のセルフケアのひとつです。

まとめ

秋は自然が静かに冬の準備を始めるように、私たちの身体や心にも「整える時間」を与えてくれる季節です。無理にがんばるのではなく、自分のペースで、できることから少しずつ始めてみましょう。

朝晩の冷えに気づいたら、ひとつ羽織を増やす。喉の乾燥を感じたら、温かいお茶をゆっくり飲んでみる。そんな小さな気づきと行動が、体と心を守る大切な養生になります。

今年の秋は、自然の変化に寄り添いながら、日々の暮らしの中で“私にちょうどいい整え方”を見つけてみてください。きっと、冬に向けての心と体の準備が、自然と整っていくはずです。

漢方について、毎日の体調に関して不安なことがありましたら、ぜひ私たちにお気軽にご相談くださいませ。心と体をいたわり、穏やかな秋を過ごしていきましょう。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持つ。
臨床歴20年の経験を活かし、子供からご高齢の方々の幅広い世代のお悩み、病気の改善のお手伝いをさせていただきます。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。

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