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漢方偉人伝 呉有性(ごゆうせい)
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 呉有性(ごゆうせい)」を公開しました!
呉有性 ― 『温疫論』で伝染病学を切り開いた明末清初の医家
古代中国における疫病の歴史
中国古代の医学史において、疫病との闘いは人類にとって永続的な課題でした。
古代中国では伝染病を「疫病」「時行」「天行」「瘟疫」などと呼び、すでに甲骨文の時代からその概念が存在していました。
先秦時代の古典には疫病に関する記述が散見されるものの、当時はまだ明確な定義がなく、原因や性質の理解は十分ではありませんでした。
秦漢時代に入ると、疫病の記録が増え、季節性や伝染性についての認識が進みます。
古代の人々は自然現象や気候の異常を、疫病発生の主な原因の一つと考えていました。
その被害は深刻で、「千戸滅門(千戸が滅ぶ)」という言葉で、疫病の惨状が語られています。

呉有性の登場と時代背景
明末清初の医家・呉有性(ごゆうせい)は、江蘇省呉県の出身で、族長という高い社会的地位を持つ人物でした。
当時の中国は戦乱と社会不安、そして頻発する瘟疫(感染症)に苦しむ時代でした。
こうした混乱の中で、呉有性は人々を救うために医学研究に打ち込み、中国医学史上初の急性外感伝染病の専門書『温疫論』を著しました。
『温疫論』と「雑気学説」
『温疫論』は、伝統的な「六気致病学説(風・寒・暑・湿・燥・火が病をもたらす)」を超えた革新的な理論を打ち立てた著作です。
呉有性は、新たに「雑気学説」を提唱しました。
これは、天地の間に存在する特殊な「雑気」が人に侵入して病を引き起こすという理論であり、
現代でいうウイルスや細菌の存在を予見するような洞察でした。
「一病一薬」の理念
呉有性はまた、「一病一薬」という大胆な構想を提示しました。
これは「それぞれの病には特効となる薬が存在する」という考え方で、
自然界のあらゆる物質には、それを制する“克星”があるという自然観に基づいています。
当時の技術ではその理念を実現することはできませんでしたが、この発想は現代の病原学・ワクチン理論にも通じる先見性を備えていました。
後世への影響
呉有性の『温疫論』は、後の温病学の発展に多大な影響を与えました。
清代以降の温病学家たちは、彼の理論をもとに四気・衛気営血弁証などの体系を発展させ、
感染症治療における漢方医学の理論的基盤を築き上げました。
呉有性の業績は、今日の疫病防治や公衆衛生の思想にも通じる普遍的な価値を持ち続けています。
西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
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この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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