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漢方偉人伝 張璐(ちょうろ)
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 張璐(ちょうろ)」を公開しました!
張璐 ― 『医通』を完成させた清代の巨匠
儒学から医学への転身
清朝初期の名医・張璐(ちょうろ、1617–1699)は、50年以上にわたって研究を重ね、中国医学史に残る名著『医通(いとう)』を完成させた人物です。
彼は江南長洲(現在の江蘇省蘇州)に生まれ、若い頃は儒学を学び、詩文にも秀でていました。
しかし、明朝末期の動乱によって仕官の道が閉ざされ、やむなく洞庭山に隠棲。
この15年間の静かな生活の中で、張璐は医学の道へと転身し、独学で膨大な医学書を読み込みながら臨床と理論を磨いていきました。

医学への情熱と『医帰』の誕生
1659年、故郷の蘇州に戻った張璐は、その卓越した医術によって「国手(こくしゅ)=名医」と称えられました。
隠居中に書き溜めた医学ノートを整理してまとめたのが『医帰(いき)』です。
しかし、張璐はその内容に満足せず、何度も推敲と改訂を重ねました。
当時、医学書が乱立し、各家の理論が分散していたことに疑問を抱いていた張璐は、体系的で実用性の高い総合医学書を目指したのです。
その後、息子たちの協力を得て眼科や痘疹治療などの新しい分野も加筆し、最終的に『医通』として完成させました。
『医通』の完成とその影響
完成した『医通』は清の康熙帝に献上され、高く評価を受けました。
本書は古今の医理を整理し、理論と臨床を統合した総合医学書として広く読まれました。
やがて『四庫全書』にも収録され、中国のみならず日本や朝鮮でも研究の対象となり、国際的な影響を及ぼしました。
古典への敬意と30年の精読
張璐は『黄帝内経』や『傷寒雑病論』といった古典を「医学の根本」と考え、30年以上にわたって繰り返し読み続けました。
彼は後進の医師たちにも、「新しい知識を求める前に、まず古典を理解することが大切だ」と説きました。
その姿勢は、現代の医学教育にも通じる普遍的な学びの精神といえるでしょう。
医師の心得 ― 「医門十戒」
晩年の張璐は、医師の倫理と責任を明確にするために「医門十戒」を定めました。
そこでは、
- 才能におごらず、常に謙虚に学ぶこと
- 患者を貧富で差別しないこと
- 同業の医師と協力し、競争よりも助け合うこと
を重んじるよう説かれています。
これは単なる医術の心得ではなく、「人としてどう生きるか」を問う深い教えでもありました。
張璐が遺したもの
『医通』は単なる医書ではなく、張璐の生涯そのものの結晶といえるでしょう。
学問への誠実な探求心と、患者への深い慈しみ。
張璐の精神は、300年以上を経た今も医の道を歩む者たちに静かに息づいています。
西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
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この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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