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漢方偉人伝 程応旄(ていおうぼう)

「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 程応旄(ていおうぼう)」を公開しました!

程応旄 ― 『傷寒論』研究に新風を吹き込んだ清初の医聖

『傷寒論』に革命を起こした天才医師

清朝初期の医学界に、張仲景の『傷寒論(しょうかんろん)』研究で大きな革新をもたらした医師がいました。
その名は程応旄(ていおうぼう、字:郊倩)。安徽省徽州府休寧県の出身で、鋭い洞察力と豊富な臨床経験を持ち、清初の「医聖」と称えられた人物です。

彼の生涯の最大の業績は、康熙十年(1671年)に完成させた全十五巻の大著『傷寒論後条辨(しょうかんろんごじょうべん)』です。
この書によって、程応旄は『傷寒論』研究の新たな地平を切り拓きました。

『傷寒論後条辨』の革新性

『傷寒論後条辨』の最大の特徴は、張仲景の原文を中心に、方有執や喩嘉言らの注釈を並列して掲載した点にあります。
これにより、読者は複数の解釈を比較しながら理解を深めることができ、従来の一方向的な注釈書とは一線を画しました。

さらに程応旄は、「表裏臓腑」という四字を病理理解の中心概念とし、人体を全体としてとらえる弁証理論を展開しました。
また、脈診を弁証論治の核心に据え、理論と臨床を密接に結びつけたことも大きな特徴です。

彼は条文を独自に再分類し、症状の変化と治療法をより実践的に整理しました。
まさに『傷寒論』の「再構築」を試みた意欲的な作品といえます。

連続して発表された著作群

同年に『医径句測(いけいくそく)』二巻を著し、脈図と処方を詳細に解析しました。
さらに二年後には『傷寒論贅余(しょうかんろんぜいよ)』を執筆し、『後条辨』で補いきれなかった内容を追加しました。
この三部作によって、程応旄は『傷寒論』の理論体系を新たな段階に押し上げたのです。

また、彼は汪機の『医読』を七巻に増補改訂し、小児科の症状や処方を新たに加えました。
韻文形式でまとめられており、医学生が暗唱しながら学べる実用的な構成になっています。

日本の古方派への影響

程応旄の研究はやがて海を渡り、江戸時代の日本にも伝わりました。
古方派の医家たちは『傷寒論』を学ぶ際に、彼の著作を重要な参考書として用いました。
とくに『後条辨』の比較注釈法は、日本の臨床漢方の発展にも大きな影響を与えたとされています。

彼の弟子・玉鈺(ぎょくぎょく)がその学問を受け継ぎ、師の思想を後世に伝えたことでも知られています。

理論と臨床を融合した「清初の医聖」

程応旄の学説は、理論の深さと臨床への応用性を兼ね備えており、
彼が目指した「実践に生きる医学」の精神は、現代中医学にも通じる普遍的な価値を持っています。

張仲景の古典を尊重しながらも、時代に合わせて再解釈した程応旄。
その革新的な姿勢こそが、彼を清初の医聖たらしめた所以です。


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この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦(臨床歴20年)

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦(臨床歴20年)

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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