漢方コラム
アトピー性皮膚炎の理解と対処法
目次
はじめに
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な炎症性皮膚疾患です。この記事では、アトピー性皮膚炎の原因、症状、診断方法、そして最新の治療法について詳しく解説します。
アトピー性皮膚炎の概要
- ・子どもの頃に発症することが多い
- ・成人でも1~3%の人が罹患
- ・明確な発症メカニズムは未解明
- ・遺伝やアレルギー体質が関与
- ・喘息や花粉症などのアレルギー疾患を併発しやすい
皮膚のバリア機能
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能低下が原因で引き起こされます。
皮膚の構造:
- ・4つの層で構成
- ・最外層は「角質層」
角質層の役割:
- ・水分蒸発防止
- ・病原体や異物の侵入防止
バリア機能低下のメカニズム:
- ・フィラグリンタンパク質の不足
- ・皮膚の乾燥しやすさ
症状
主な症状:
- ・かゆみを伴う湿疹
- ・症状の繰り返し
悪化要因:
- ・ダニ
- ・カビ
- ・汗
- ・物理的刺激
- ・ストレス
年齢による症状の違い:
- ・乳児期:じくじくとした赤い発疹(顔、首、頭皮、手、腕、脚)
- ・1~2か月後:乾燥、皮膚の肥厚
- ・成長後:首の全面、膝・肘の内側に限局
合併症:
- ・感染症
- ・白内障(10~30歳代、顔の症状が強い場合)
- ・網膜剥離
診断方法
血液検査:
- ・IgE抗体
- ・TARC(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)
アレルギー検査:
- ・パッチテスト
- ・プリックテスト
TARC検査の重要性
TARCは炎症の程度を示す指標です。
メリット:
- ・客観的な状態把握
- ・潜在的な炎症の検出
- ・治療効果の評価
注意点:
- ・慢性重症例では反映されないことがある
- ・治療中止の判断には使用しない
治療法
現在のところ、アトピー性皮膚炎を完治させる科学的に根拠のある治療法はありません。治療の主な目的は症状の改善と管理です。
1. スキンケア
- ・皮膚のバリア機能改善・維持
- ・保湿剤の使用
2. 薬物療法
外用療法
- ・ステロイド外用薬
- ・カルシニューリン阻害外用薬
- ・JAK阻害外用薬(コレクチム軟膏)
- ・PDE4阻害薬(モイゼルト軟膏)
全身療法
- ・炎症やかゆみを抑える内服薬
- ・カルシニューリン阻害内服薬
- ・JAK阻害内服薬
- ・生物学的製剤(注射)
- ・紫外線療法(ナローバンドUVB療法など)
3. 生活習慣の改善
- ・吸水性の高い肌着の使用
- ・環境整備(ダニ・ホコリの除去)
新しい治療アプローチ
プロアクティブ療法
従来のリアクティブ療法(症状が出たら薬を塗る)から、プロアクティブ療法(症状がおさまった後も薬を継続)へのシフト。
目的:
- ・症状のない状態を長期間維持
方法:
- ・薬を塗る場所を特定
- ・症状改善後も薬の使用を継続
- ・徐々に使用頻度を減らす
注意点:
- ・自己判断で薬を減らさない
- ・医師の指示に従う
漢方治療
漢方治療では、アトピー性皮膚炎を患部が乾いているのか、湿っているのか、そして体質や原因によって異なるタイプに分け、それぞれに合った漢方薬を選ぶことで、アトピー性皮膚炎を改善に導きます。
西漢方薬店では、多くのアトピー性皮膚炎でお困りの方の症状が改善しております。
個人差はありますが、早い方では2週間ほどで効果を感じていただき、体質改善に必要な期間の3ヶ月ほどみていただき、そのサイクルを繰り返して、徐々にきれいな皮膚に近づけていきます。
その後は、症状が改善するにつれて、漢方薬の分量を減らしていきます。
最終的には、漢方薬を飲まなくても良い状態まで持っていきます。
もちろん、漢方薬だけでなく、生活習慣や食事も大切です。アトピー性皮膚炎を悪化させないために、以下のことに気を付けましょう。
– 定期的に適度な運動をする
– 睡眠時間を確保する
– ストレスを溜めないようにリラックスする
– バランスの良い食事を摂る
– 砂糖など甘いものを控え、腸内細菌叢を乱さない
以上がアトピー性皮膚炎の漢方治療についてのお話でした。アトピー性皮膚炎は非常に多くの方が困っている症状です。
もし自分に当てはまる症状があると感じたら、早めにご相談ください。もう一人で悩まないでくださいね。
この記事を書いた人
西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持つ。
臨床歴17年の経験を活かし、子供からご高齢の方々の幅広い世代のお悩み、病気の改善のお手伝いをさせていただきます。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。