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漢方コラム

冷たい飲み物が体を冷やす?夏の冷えと漢方

はじめに

夏になると、キンと冷えた飲み物が恋しくなりますよね。炎天下を歩いたあとや、クーラーの効いた室内でのひとときに、つい手が伸びてしまう冷たいお茶やジュース。けれど、「お腹が冷える」「なんだか体がだるい」「寝つきが悪い」そんな体のサインに気づいたことはありませんか?

実は、何気なく続けている冷たい飲み物の摂取が、体調不良の引き金になっていることもあります。とくに、暑さと冷房、冷飲食の影響を受けやすい夏は、知らないうちに「冷え」が体の奥から進行していることも。

この記事では、夏の冷えとその影響、生活習慣や漢方の視点も交えて、身体を内側から整えるヒントをご紹介します。

冷たい飲み物で起きている体の変化

冷たい飲み物を飲むと、一時的には喉ごしも爽やかで心地よさを感じますが、体内ではさまざまな変化が起こっています。

まず、冷えた飲み物が直接胃に入ると、胃腸が急激に冷やされて消化力が低下します。これは東洋医学でも「脾胃(ひい)」の機能低下とされ、食欲不振、腹痛、下痢などにつながることがあります。

加えて、体の中で血行が悪くなることで、全身の巡りが滞り、むくみや肩こり、慢性的な疲れを引き起こす要因にも。実際に、冷たい飲み物を習慣的に飲んでいる方の中には、「疲れが抜けにくい」「冷え性がひどくなる」と感じている人も多いのです。

「冷えは万病のもと」とは東洋医学の代表的な考え方の一つですが、これは血液や気の巡りを滞らせ、免疫力の低下やホルモンバランスの乱れを引き起こすことを意味します。現代でも、この考え方は多くの体調不良に通じるものがあるとされています。

なぜ夏に“冷え”を感じるのか?

「真夏に冷えるなんて不思議」と思われる方も多いですが、現代のライフスタイルではむしろ夏こそ冷えに注意が必要な季節です。

最大の要因は、室内と屋外の寒暖差。炎天下の外気と、エアコンで冷え切った室内を頻繁に出入りすることで、自律神経が乱れやすくなります。自律神経は体温調整や代謝、内臓の働きをコントロールしているため、乱れると体調も不安定に…

また、汗をかくことで体内の水分やミネラルが失われ、血流が悪くなることも“冷え”の一因です。体が冷えていることに気づかずに、さらに冷たいものを摂ることで悪循環が生まれ、夏バテや熱中症のリスクも高まります。

女性に多い“夏の冷え”のサイン

特に女性は冷えに敏感で、夏場でも「足元が冷える」「生理が不順になる」「肌の調子が悪い」などの不調を感じやすい傾向があります。

女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、熱を生み出す力が弱く、血行不良による冷えが起こりやすい体質です。夏の冷えはそのまま「冷え性」や「低体温」につながるほか、生理痛やPMS(生理前症候群)の悪化にも影響します。

冷えを感じたときには、まず「下腹部」「足首」「首元」などの冷えやすい部位を守るように意識することがポイントです。

夏の冷えを防ぐ生活習慣

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した調査によると冷たい物を食べる時に気を付けていることがあると回答した人は約半数と意外と多い印象です。

調査結果:“涼”を感じる食べ物・飲み物に関する調査

冷えを防ぐ生活習慣には下記があります。

◎飲み物の温度を見直す

冷たい飲み物ばかりを選ぶのではなく、常温や温かめのものを選ぶことが、内臓の負担軽減につながります。
おすすめは、白湯、常温の麦茶、温かい生姜湯など。少しの工夫で体の内側から変わっていきます。

◎体を温める食材を取り入れる

ショウガ、にんにく、味噌、ねぎなどの「温性食品」を積極的に。冷たい麺類などを食べるときには、温かいスープを添えるとバランスがとれます。

◎お風呂につかる習慣を

夏場でもシャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯に10〜15分ほど浸かることをおすすめします。リラックス効果も高まり、自律神経の調整にも役立ちます。

◎服装や室温に気を配る

冷房の効いた室内では、薄手のカーディガンやストール、腹巻きなどで体を守りましょう。エアコンの風が直接当たらないように調整するのも冷え対策のひとつです。

漢方の視点から見る夏の冷え

東洋医学では、「冷え」は「陽虚(ようきょ)」「脾虚(ひきょ)」といった体質に関係し、特に消化器系の弱さが強調されます。

「脾」は栄養を体中に送る源とされ、これが弱ると疲れやすくなったり、むくんだり、集中力が落ちたりと、まさに夏バテのような症状が現れます。

このような体質傾向がある場合、必要に応じて漢方薬や薬膳茶を取り入れることも有効です。たとえば、生薬をベースにしたお茶や、消化を助けるスープなどは、無理なく日常に取り入れることができます。

ただし、漢方薬を使用する際は、専門家による体質の見極めが大切です。薬局や漢方薬局で相談することで、自分に合ったケア方法を見つけることができます。

脾虚・陽虚を補うおすすめの食材と食事

■ 主食系
  温かいおかゆ
(特に白米・小豆・もち米など)
 → 消化によく、脾を助ける代表的な食事です。

さつまいも・じゃがいも
 → 脾を補い、エネルギーを高める食材。食物繊維も豊富で便通にも◎。

■ 温め効果のある野菜
  にんじん・かぼちゃ・玉ねぎ・ねぎ
 → 体を温める性質があり、脾を養いながら陽気を補います。

■  薬味・調味料
  生姜(しょうが)・シナモン・味噌
 → 陽気を補い、胃腸を温め、冷えの改善に役立ちます。
        みそ汁に生姜を加えるのもおすすめ。

冷たいものをやめられないときの工夫

「分かってはいるけど、やっぱり冷たいものが飲みたい」
「暑さが厳しいときは我慢できない」
それが正直な気持ちではないでしょうか。無理に制限してストレスをためるのではなく、体への負担を最小限に抑えながら、上手に付き合っていく工夫をしてみましょう。

◎氷の量を控えめに

飲み物に入れる氷を減らすだけでも、冷たさによる内臓への刺激はぐっと軽減されます。完全にやめるのではなく、「半分にする」「氷なしのメニューを選ぶ」といった小さな工夫でも十分に効果があります。特に、冷たいドリンクを一気に飲むことは、胃腸を急激に冷やしてしまう原因に。氷の量を調整することで、同じ飲み物でも身体へのやさしさは大きく変わってきます。

◎常温の飲み物を冷蔵庫とは別に用意

あらかじめ常温で保存しておける飲料(水・麦茶・ルイボスティーなど)を別の棚やボトルで用意しておくと、「つい冷蔵庫に手が伸びてしまう」という習慣から離れることができます。おしゃれなピッチャーや水筒を使うなど、見た目の楽しさを加えるのも効果的です。「冷たくない飲み物」がすぐに手に取れる状態にあるだけで、自然と選択が変わってきます。

◎冷たいものを摂ったら、温かい飲み物やスープを一緒に

冷たいものをどうしても摂りたいときは、「温かいものとセットで」という意識を持ってみましょう。例えば、冷たいアイスを食べたあとに温かいほうじ茶を一杯飲む、冷やしうどんには温かいみそ汁を添える、といった工夫です。こうすることで、胃腸の温度バランスが保たれ、内臓へのダメージを抑えることができます。

◎アイスの代わりに凍らせた果物や手作り寒天ゼリーを

市販のアイスクリームや氷菓は、冷たさに加えて糖分や脂肪分も多く、胃腸への負担が大きくなりがちです。代わりに、旬の果物(バナナ、ぶどう、みかんなど)を一口サイズで凍らせたり、寒天やゼラチンで作った手作りゼリーを冷やしておくのもおすすめです。自然な甘さとやさしい口あたりで、身体を冷やしすぎずに“ひんやり”を楽しむことができます。

まとめ

夏こそ「冷え」に注意が必要な季節。
冷たい飲み物は爽快感をもたらしますが、体の中では「冷え」がじわじわと進んでいるかもしれません。

ちょっとした習慣の見直しや、温める食材の活用、漢方的なアプローチなどを取り入れることで、体の巡りが整い、夏バテや疲労感を防ぐことができます。

暑さをしのぎながら、体の声に耳を傾け、やさしく寄り添って過ごしてみましょう。
小さな一歩が、健やかな夏を支える大きな力になるはずです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
ぜひお困りの際にはわたしたち西漢方薬店にご相談くださいませ!
心と体が整うことで、毎日の暮らしがより豊かになることを願っています。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持つ。
臨床歴20年の経験を活かし、子供からご高齢の方々の幅広い世代のお悩み、病気の改善のお手伝いをさせていただきます。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。

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