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漢方コラム

夏の子どもの体調管理〜生活や漢方で整える〜

はじめに

暑さと湿度が高くなる夏は、大人にとっても体力を消耗しやすい季節ですが、特に子どもにとっては体調を崩しやすい時期といえます。まだ体温調節機能や免疫力が未発達な子どもは、外の暑さと室内の冷房の温度差、冷たい食べ物・飲み物の摂取、生活リズムの乱れなどが重なることで、体への負担が大きくなります。

「なんとなく元気がない」「食欲が落ちてきた」「寝つきが悪くなった」など、目に見えにくい変化が増えるのも夏の特徴です。さらに、保護者自身も疲れを感じていると、子どもと向き合う余裕を持ちにくくなり、家庭全体のリズムが乱れることもあるでしょう。

本記事では、子どもに視点を向けながら、生活習慣の見直しと、漢方の知恵を活かした体調管理法を、優しく丁寧にご紹介します。家庭でできる小さな工夫から始めて、親子そろって元気に夏を乗り切るヒントになれば幸いです。

子どもが夏に体調を崩す原因とは

  • まだ発達途上の体温調節
      子どもは汗腺も発達途上のため、暑さに対する体温調整が大人より難しく、外気と室内の温度差に弱い傾向があります。

  • 発汗による水分・ミネラル不足
      大量の発汗によって脱水やミネラルバランスの乱れが生じ、体調不良を誘発します。

  • 冷たい飲食で胃腸疲労
      アイスや冷たい飲料は、胃腸を冷やし消化力を弱めてしまい、免疫力の低下にもつながります。

  • 睡眠の質の低下と運動不足
      蒸し暑さによって寝苦しくなり、睡眠不足に。加えて、日差しを避けて外遊びが減ることで体を整える機会も減少します。

こうした要因が重なることで、子どもの調子が「なんとなく悪い」といった状態につながりやすくなります。もちろん大人もです!

子どもが体調を崩した時の症状は?

子どもが体調を崩したときには、大人とは違った症状やサインを見せることがあります。特に言葉で不調をうまく伝えられない年齢の場合、行動や表情、日常の変化を観察することが大切になります。
以下に、子どもによく見られる体調不良の特徴や症状を挙げます。

⚫︎食欲の低下

・食事の量が明らかに減る、好きなものにも反応が薄い
・飲み物ばかり欲しがる(特に冷たい飲み物)

⚫︎眠りが浅い・寝つきが悪い

・夜中に何度も目を覚ます
・寝つきが悪く、いつもより早起き・寝坊するなど睡眠リズムが乱れる

⚫︎元気がない/活動量が減る

・外で遊びたがらない
・昼間でも横になりたがる、ぼーっとしている時間が多くなる

⚫︎肌・顔色の変化

・顔が赤い、青白い、くすんで見える
・汗のかき方が普段と違う(大量・少量・冷たい汗)

⚫︎機嫌が悪くなる

・いつもより怒りっぽい、泣きやすい
・抱っこをせがむ、離れたがらない(特に乳幼児)

⚫︎便やおしっこの変化

・下痢や便秘が続く
・おしっこの回数や量が極端に少ない/濃い色になる

⚫︎発熱・咳・鼻水・嘔吐などの身体症状

・突然の発熱(微熱でもぐったりしている場合は注意)
・乾いた咳、鼻づまり、くしゃみ
・お腹が痛い、吐いてしまうなど

⚫︎皮膚の異常

・発疹、じんましん
・虫刺されが悪化したような腫れやかゆみが強い反応

注意したい夏特有の症状

熱中症:顔が赤い・ぐったり・頭痛・吐き気・発汗後に汗が止まるなど

脱水症状:唇が乾いている、尿が濃い・少ない、泣いても涙が出ない

夏風邪(ヘルパンギーナ・手足口病など):発熱+のどの痛み、発疹、口内炎などが特徴


子どもの体調不良は進行が早いこともありますので、「いつもと何か違うな」と感じたら、無理をさせず早めに休養させることが大切です。漢方の考え方では、こうした変化を「気の巡り」「熱のこもり」「水分バランスの乱れ」などとして捉え、未然に整えることも重要視されます。

生活習慣でできる子どもの体調管理法

食事

胃腸にやさしい食材を意識し、冷たいものを控えめに。温かいお粥や野菜スープ、発酵食品(納豆や味噌)などで胃腸をいたわりましょう。

睡眠

エアコンはタイマー設定や温度調整で適切に運用し、室温・湿度のバランスを調整します。早寝早起きのリズムを保つことが、体調管理の基本です。

運動・遊び

朝や夕方、涼しい時間帯を活用して外遊びを取り入れましょう。室内でも柔軟体操や軽いゲームなど、動きを促す工夫を。

水分補給

脱水を未然に防ぐには、麦茶や経口補水液をこまめに摂取することが大切。冷たすぎない温度で、タイミングも適切に。

家族で整える

保護者が体調不良だと、家庭のリズムも乱れがちです。親自身の睡眠・食事・水分補給にも気を配り、親子そろって調子を整える意識を持ちましょう。

 漢方的に見る「夏バテ」と子どもの体調管理

漢方では「気(エネルギー)」「血」「水(体液)」のバランスが大切とされ、特に夏は「気虚(ききょ)」や「脾虚(ひきょ)」の傾向が表れやすい季節です。

  • 気虚(ききょ)
      エネルギー不足、疲れやすさ、元気がない状態、とされています。

  • 脾虚(ひきょ)
      胃腸の機能が弱く、食欲不振や消化不良、下痢などを起こしやすい体質です。

漢方食材と取り入れ方

  • 自然な甘味をもつ雑穀類(うるち米、玄米、もち米、おかゆなど):エネルギー補給・胃腸にやさしい。

  • なつめ(大棗):気を補い、脾胃を整える働きがあり、食欲不振や消化不良にも適しています。

  • 緑豆やはとむぎなどの冷まし素材:夏の熱や湿を和らげ、脱水傾向にも対応可能。

夏の食材で体の内側から調整する知恵

夏に積極的に取り入れたい食材

  • ウリ科の野菜(ゴーヤ、きゅうり、冬瓜など):余分な熱や水分を排出しやすくする「涼性」の効果があります。

  • 夏野菜(ナス、トマト、とうもろこしなど):体の内にこもる熱を和らげ、胃腸にやさしいものが多いです。

  • そら豆のポタージュ:胃腸に負担が少なく、冷製スープで取り入れやすい一品

  • 梅干し:クエン酸が疲労回復に効果的で、唾液分泌促進や口内ケアにもつながります。

軽めの薬膳レシピ例

  • 鶏肉と棗の参鶏湯風スープ:鶏肉が胃腸を温め、棗が消化と血行を支えます。ご飯や温野菜と共に提供するとバランスよく栄養補給できます。

おうちでできる「子どもと一緒に整える」工夫

  • 一緒に料理をする:食材の選び方や簡単な調理を通して、子どもと一緒に体を整える意識を育てます。

  • 遊びを取り入れた習慣づくり:水を使った遊び(打ち水やシャボン玉)、体を動かす工作などで自然にリズムを整えます。

  • 冷房ルールを親子で決める:強風や冷えすぎを避けるために、温度設定や衣服選びなどルールを共有しましょう。

  • 漢方素材を日常に取り入れる:例えば、なつめ入りのお粥を朝食にしたり、緑豆スープを冷やしてデザート感覚で楽しむなどのアレンジが可能です。

子どもの元気は家庭のリズムから

夏は、子どもにとって楽しい季節である一方、体調を崩しやすい時期でもあります。暑さや湿度、生活リズムの乱れなど、見えにくいストレスが蓄積し、気づいたときには不調が現れていることも少なくありません。しかし、だからこそ日々の生活の中で少しずつ整えていくことが、子どもの元気を守る第一歩になります。

今回ご紹介したような、食事・睡眠・水分補給・運動といった基本的な生活習慣を見直すことに加え、漢方や薬膳の考え方を日常に取り入れることで、体の内側からバランスを整えることができます。難しく考える必要はなく、季節の食材や身近な食の養生を意識することからはじめてみましょう。

また、子どもの体調管理は、親の心身の安定にも大きく影響されます。まずは親御さんご自身が自分の体に耳を傾け、無理をせず心地よい暮らしを目指すことが、家族みんなの健やかさにつながります。小さな変化を見逃さず、親子で整える夏を、無理なく、楽しみながら実践していきましょう。

何かお困りのことがありましたら、予防という意味でも、まずは私たちにお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持つ。
臨床歴20年の経験を活かし、子供からご高齢の方々の幅広い世代のお悩み、病気の改善のお手伝いをさせていただきます。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。

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