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経方と時方・漢方の基本知識
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「経方と時方・漢方の基本知識」を公開しました!
漢方薬の「経方」と「時方」とは?処方の歴史と生薬の性質を分かりやすく解説
漢方薬について調べていると、「経方」や「時方」という言葉を目にすることがあります。
どちらも漢方処方を分類するための言葉ですが、その違いをご存知でしょうか。

実は、経方と時方は、漢方医学が長い歴史の中でどのように発展してきたのかを知るための重要な手がかりです。
さらに漢方では、処方の歴史だけでなく、一つひとつの生薬が持つ「気」と「味」も重視されています。
今回は、漢方薬の二つの大きな流れである経方と時方、そして生薬の性質を示す気味について分かりやすく解説します。

漢方処方は成り立ちによって分類される
漢方薬には、非常に長い歴史があります。
現在使われている処方の中には、およそ1800年以上前に考案されたものもあれば、後の時代に新たな病気や体質へ対応するために作られたものもあります。
こうした処方は、成立した時代や医学理論によって、大きく「経方」と「時方」に分けて考えられます。
古典医学の基本となる「経方」
経方とは、古い医学書に記載された伝統的な処方を指します。
特に重要なのが、中国の後漢時代に張仲景がまとめたとされる、
・『傷寒論』
・『金匱要略』
に収載されている処方です。
『傷寒論』では、発熱や悪寒などを伴う急性疾患が、体の中でどのように進行するのかを段階的に捉え、それぞれの状態に適した治療法が示されています。
一方の『金匱要略』には、内科疾患をはじめとする幅広い病気の治療法が記されています。
葛根湯や麻黄湯、小柴胡湯、八味地黄丸など、現在でも広く知られている処方の多くが、これらの古典を起源としています。

経方の特徴
経方は、比較的少ない種類の生薬によって構成されているものが多く、それぞれの役割が明確です。
患者さんに現れている症状や腹部の状態、脈、体力などを見極め、その状態に一致する処方を選びます。
そのため、病名よりも現在の体の反応を重視する、非常に実践的な治療体系と言えるでしょう。
古い時代に作られた処方でありながら、現代でも使用され続けているのは、長い臨床経験の中で有用性が確かめられてきたからです。
時代とともに発展した「時方」
『傷寒論』や『金匱要略』より後の時代に考案された処方は、一般的に「時方」と呼ばれます。
医学が発展するにつれて、病気の捉え方や治療対象も広がっていきました。
特に金元時代以降になると、五臓六腑や気血水、体質などをより細かく分析し、慢性疾患や複雑な病態にも対応する処方が数多く作られます。
さらに明や清の時代には、熱性疾患を新たな視点から捉える温病学も発展しました。
清代の医学書『温病条弁』には、強い熱を伴う感染症などに対応する治療法が体系的にまとめられています。

経方と時方はどちらが優れているのか
経方と時方は、どちらか一方だけが優れているというものではありません。
経方は、症状と処方の対応が明確で、急性疾患を含む幅広い病態に用いられてきました。
時方は、後の時代に発展した医学理論を取り入れ、慢性的な不調や複雑な体質にも対応できるよう作られています。
実際の漢方治療では、患者さんの状態に応じて、経方と時方の両方から適切な処方が選ばれます。
大切なのは処方が古いか新しいかではなく、現在の体質や症状に合っているかどうかなのです。
生薬の働きを示す「気」と「味」
漢方では、処方の成り立ちだけでなく、一つひとつの生薬が持つ性質も細かく分類します。
その基本となるのが「気」と「味」です。
ここでいう「気」は、生命エネルギーを意味する気とは少し異なり、生薬が体を温めるのか、冷ますのかという性質を表します。
一方の「味」は、生薬が持つ味と、その味に対応する働きを示します。
この二つを合わせて「気味」と呼ぶこともあります。

生薬が体を温めるか冷ますかを示す「気」
生薬の気は、大きく、
・寒
・涼
・温
・熱
に分類されます。
寒と涼は体の熱を冷ます方向に働き、温と熱は体を温める方向に働きます。
また、温めも冷ましもしない穏やかな性質は「平性」と呼ばれます。
例えば、生姜や桂皮は体を温める温性の生薬です。
冷えや悪寒、胃腸の冷えなどに用いられる処方へ配合されます。
一方、薄荷や菊花は、体の上部にこもった熱を冷ましたり、頭や目の不調を整えたりする涼性の生薬です。
このように、生薬が持つ温度の性質と、患者さんの寒熱の状態を照らし合わせて処方が選ばれます。

生薬の働きを示す「五味」
漢方では、生薬の味を主に五つに分類します。
それが、
・酸味
・苦味
・甘味
・辛味
・鹹味
の五味です。
それぞれの味には、異なる働きがあると考えられています。

酸味
酸味には、緩んだものを引き締め、体から必要なものが漏れ出るのを防ぐ働きがあるとされます。
寝汗や慢性的な下痢などに用いられる生薬に見られる性質です。
五臓では肝との関係が深いと考えられています。
苦味
苦味には、体内の熱を冷まし、余分なものを下へ降ろし、乾燥させる働きがあるとされます。
熱がこもった状態や、湿気が停滞した状態などに用いられます。
五臓では心と深く関係します。
甘味
甘味には、体を補い、緊張を緩め、複数の生薬を調和させる働きがあります。
体力低下や胃腸の弱り、筋肉の緊張などに使われることがあります。
五臓では脾と関連します。
辛味
辛味には、気や血を巡らせ、発汗を促し、体表の邪気を追い出す働きがあると考えられます。
風邪のひき始めや、気血の滞りに用いられる生薬に多い性質です。
五臓では肺と関係します。
鹹味
鹹味とは塩辛い味を指します。
硬くなったものを柔らかくしたり、体内の不要物を下へ排出したりする働きがあるとされます。
五臓では腎との関係が深いと考えられています。
気と味の組み合わせで生薬の働きが決まる
実際の生薬は、温かい、冷たい、甘い、苦いといった一つの特徴だけで働くわけではありません。
例えば、温性で辛味を持つ生薬であれば、体を温めながら気血を巡らせる働きが期待されます。
寒性で苦味を持つ生薬であれば、体内の強い熱を冷まし、余分なものを下へ導く方向に働きます。
このように、気と味を組み合わせて考えることで、その生薬が体のどこに、どのような方向で作用するのかを理解できるのです。

漢方薬は長い歴史と緻密な理論から作られている
漢方薬は、単に効きそうな生薬を混ぜ合わせたものではありません。
古典を起源とする経方と、時代の変化に合わせて発展した時方。
そして、生薬一つひとつが持つ気と味。
こうした歴史と理論を組み合わせながら、患者さんの体質や病気の状態に適した処方が選ばれています。
漢方薬の名前や構成の奥には、何百年、何千年という臨床経験と、体のバランスを見極めるための緻密な知恵が詰まっているのです。
西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
自分の症状にどのような漢方薬が合っているか、漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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