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寒気とだるさに【麻黄附子細辛湯】

「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「寒気とだるさに【麻黄附子細辛湯】」を公開しました!

麻黄附子細辛湯とは?熱が出ないのに寒くてだるい「虚弱タイプの風邪」に使われる漢方薬

風邪をひいたのに高い熱は出ない。

それなのに、ゾクゾクするほど寒く、とにかくだるくて眠い。

このような一見すると不思議な風邪症状に用いられる代表的な漢方薬が「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」です。

葛根湯や麻黄湯などが比較的体力のある人の風邪に使われるのに対し、麻黄附子細辛湯は、体力が低下し、体を温める力そのものが弱っている人に用いられることがあります。

今回は、麻黄附子細辛湯がどのような状態に適しているのか、わずか3種類の生薬からなる処方の仕組みや、葛根湯・桂枝湯との違いについて詳しく解説します。

麻黄附子細辛湯とは?

麻黄附子細辛湯は、中国の古典医学書『傷寒論』に記載されている歴史の古い処方です。

構成されている生薬は、その名前の通り、

・麻黄
・附子
・細辛

のわずか3種類です。

非常にシンプルな処方ですが、「体の内側を温める働き」と「体表の邪気を外へ追い出す働き」を組み合わせているところに大きな特徴があります。

ポイントは「少陰病」の初期

麻黄附子細辛湯を理解するうえで重要なのが、『傷寒論』における「少陰病」という考え方です。

少陰病では、病気と戦うための体力や、体を温める「陽気」が低下しているため、一般的な風邪とは異なる症状が現れます。

例えば、

・強い寒気がする
・発熱が目立たない
・手足が冷たい
・全身がだるい
・横になっていたい
・眠気が強い
・脈に力がない

といった状態です。

『傷寒論』では、少陰病の特徴として「但欲寐(ただいねんとほっす)」という表現が使われています。

簡単に言えば、「とにかく横になって眠っていたい」という状態です。

高熱を出して激しく病気と戦うほどの力がなく、体が活動性を落としている状態と考えると分かりやすいでしょう。

「寒いのに高熱が出ない」のはなぜ?

麻黄湯や葛根湯が適する風邪では、体にはまだ病邪と強く戦う力があります。

そのため、発熱や全身痛など比較的激しい反応が現れます。

一方、麻黄附子細辛湯が適するタイプでは、体を温める力そのものが不足しています。

そのため、病邪が体表にあるにもかかわらず、十分な熱を生み出せません。

結果として、

「寒気は非常に強いのに、熱はそれほど高くない」

という特徴的な状態が現れるのです。

漢方では単純に体温計の数字だけを見るのではなく、本人がどれほど寒さを感じているのか、手足は冷えているのか、体力は残っているのかといった全身の状態を見て判断します。

たった3つの生薬による役割分担

麻黄附子細辛湯の特徴は、3種類という少ない生薬で「内」と「外」の両方へ働きかけることです。

まず重要なのが「附子」です。

附子は体を強く温める代表的な生薬で、冷えて低下した身体機能を支える目的で用いられます。

麻黄附子細辛湯では、体の内側にある強い冷えに働きかける重要な役割を担います。

次に「細辛」です。

細辛も温める性質を持ち、寒さを散らしながら、頭痛や鼻水など上半身に現れる症状に用いられる生薬です。

特に、冷えると透明でサラサラした鼻水が出るような状態にも使われます。

そして「麻黄」は、体表に残っている邪気を外へ発散させる方向に働きます。

つまり、

「附子で内側を温める」
「細辛で冷えを散らす」
「麻黄で体表の邪気を発散させる」

という非常に合理的な構成になっているのです。

麻黄湯との大きな違い

麻黄附子細辛湯にも麻黄が入っているため、麻黄湯と似た薬に思えるかもしれません。

しかし、適する状態は大きく異なります。

麻黄湯が適するのは、

・比較的体力がある
・高熱が出る
・強い悪寒がある
・汗が出ていない
・全身の筋肉や関節が痛む

といった、体が病邪と激しく戦っている状態です。

一方、麻黄附子細辛湯では、

・体力が低下している
・寒気が非常に強い
・発熱は目立たない
・手足が冷える
・全身がだるい
・とにかく眠い

といった症状が目安になります。

同じ「寒気の強い風邪」でも、体に病気と戦う力が残っているかどうかが大きな違いなのです。

葛根湯・桂枝湯との使い分け

風邪の初期に使われる漢方薬には、葛根湯や桂枝湯もあります。

葛根湯は、比較的体力があり、

・悪寒
・発熱
・汗が出ていない
・首筋から背中の強いこわばり

がある場合に用いられる代表的な処方です。

桂枝湯は、それより体力が低下しており、

・悪寒
・発熱
・自然に汗が出ている

という「表虚証」が一つの目安になります。

そして麻黄附子細辛湯は、さらに体を温める力が低下し、

「熱があまり出ない」
「とにかく寒い」
「手足が冷たい」
「だるくて眠い」

という状態に用いられます。

漢方では「風邪」という一つの病名だけでも、患者さんの体力や汗、寒気、熱などを細かく観察して処方を使い分けるのです。

アレルギー性鼻炎にも使われる理由

麻黄附子細辛湯は、風邪だけに使われる処方ではありません。

冷えを背景として、

・透明でサラサラした鼻水
・くしゃみ
・鼻づまり
・冷えると鼻症状が悪化する

といった症状がある場合、アレルギー性鼻炎などに応用されることもあります。

ここでも重要なのは「鼻炎だから使う」のではなく、「冷えが強く、体力が低下している」という全身の状態です。

同じサラサラした鼻水でも、水分停滞が目立つ場合には小青竜湯など、別の処方が検討されることもあります。

附子が入っているからこそ注意も必要

麻黄附子細辛湯には「附子」という特徴的な生薬が含まれています。

附子はトリカブトを基原とする生薬ですが、医薬品では適切に加工されたものが使用されます。

それでも作用の強い生薬であり、自己判断で量を増やしたり、複数の附子含有漢方薬を重ねたりするのは避ける必要があります。

また、麻黄も含まれているため、動悸、不眠、発汗などが現れる場合があります。

持病がある方や他の薬を服用している方は、医師や薬剤師などの専門家に相談したうえで使用することが大切です。

まとめ

麻黄附子細辛湯は、『傷寒論』に記載されている、体力が低下して冷えの強い状態に用いられる代表的な漢方薬です。

特に、

・強い寒気がある
・発熱が目立たない
・手足が冷たい
・全身がだるい
・横になっていたい
・眠気が強い
・冷えを伴う鼻水などがある

といった状態が一つの目安となります。

麻黄湯や葛根湯が、まだ体力が残っていて病邪と強く戦っている状態に使われるのに対し、麻黄附子細辛湯は、病気と戦うための「温める力」まで弱っている状態に用いられるのが大きな違いです。

同じ風邪でも、「熱が何度あるか」だけではなく、寒気、汗、体力、手足の冷え、眠気などを細かく観察する。

こうした体全体の反応から、その人に合った処方を考えていくことが、漢方の大きな特徴なのです。

西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。

自分の症状にどのような漢方薬が合っているか、漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦(臨床歴20年)

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦(臨床歴20年)

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。

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