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激しい咳と切れない痰に【五虎湯】|肺の熱をさます漢方の仕組み【漢方薬解説】

「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「激しい咳と切れない痰に【五虎湯】」を公開しました!

五虎湯とは?熱を帯びた激しい咳と粘る痰に使われる漢方薬

風邪をこじらせたあと、ゼーゼー、ゴホゴホと激しい咳がいつまでも続く。

しかも、体には熱感があり、汗をかきやすく、痰は粘ってなかなか切れない。

このような「熱を帯びた咳」に用いられる代表的な漢方薬が「五虎湯(ごことう)」です。

五虎湯は、その名前の通り力強い印象のある処方ですが、実際には「麻杏甘石湯」という漢方薬をもとに、痰や炎症への働きをさらに強めた処方と考えると分かりやすいでしょう。

今回は、五虎湯がどのような症状に適しているのか、配合されている生薬の役割や、麻杏甘石湯・小青竜湯・麦門冬湯との違いについて詳しく解説します。

五虎湯とは?

五虎湯は、激しい咳や喘鳴、気管支の炎症などに用いられる漢方処方です。

構成されている代表的な生薬は、

・麻黄
・杏仁
・石膏
・甘草
・桑白皮

の5種類です。

このうち、麻黄・杏仁・石膏・甘草の4種類は「麻杏甘石湯」と同じ構成です。

つまり五虎湯は、麻杏甘石湯に「桑白皮」を加えた処方なのです。

ポイントは「熱」と「痰」が同時にあること

五虎湯が向いているのは、単に咳が激しいだけではありません。

大きなポイントとなるのが、

・体に熱感がある
・自然に汗をかきやすい
・喉が渇く
・咳が激しい
・ゼーゼー、ヒューヒューする
・痰が粘って切れにくい

といった状態です。

東洋医学では、このように肺に熱がこもり、さらに余分な水分や痰が絡んでいる状態を「肺熱」や「痰熱」などの視点から捉えます。

熱だけなら冷ます。

痰だけならさばく。

しかし五虎湯が必要になるような状態では、「熱」と「痰」の両方に同時に対応する必要があるのです。

ベースとなる「麻杏甘石湯」

五虎湯を理解するためには、まず麻杏甘石湯を知ることが大切です。

麻杏甘石湯は、

「汗をかいているのに、ゼーゼーと息苦しい」

という、肺に熱がこもった激しい咳や喘鳴に用いられる処方です。

麻黄と杏仁が咳や喘鳴を鎮め、石膏が肺にこもった熱を冷まし、甘草が全体を調和させます。

五虎湯は、この麻杏甘石湯の働きを基本にしながら、さらに痰や気道の炎症を意識した処方になっています。

五虎湯の鍵を握る「桑白皮」

五虎湯最大の特徴は、「桑白皮(そうはくひ)」が加わっていることです。

桑白皮は、クワの根の皮を乾燥させた生薬です。

漢方では、肺にこもった熱を冷まし、咳や喘鳴を鎮める方向に働く生薬として用いられます。

さらに、余分な水分をさばく作用もあるため、痰が絡む咳や、気道に水分が停滞しているような状態にも適しています。

この桑白皮が加わることで、五虎湯は麻杏甘石湯よりも「痰が多い」「気道の炎症が長引いている」といった状態に対応しやすくなるのです。

麻黄と杏仁で呼吸を整える

五虎湯の中で、咳や喘鳴に重要な役割を果たすのが「麻黄」と「杏仁」です。

麻黄には、肺の気を開き、呼吸を楽にする方向に働く性質があります。

杏仁は、上へ逆流した肺気を下へ導き、咳を鎮めます。

この二つは、咳の漢方薬でよく組み合わされる代表的なペアです。

ゼーゼーとした喘鳴や、息を吐きにくいような状態に対して、呼吸の流れを整える役割を担っています。

石膏が肺の熱を冷ます

五虎湯に含まれる「石膏」は、非常に強い寒性を持つ生薬です。

体内にこもった熱を冷まし、強い口渇や熱感を和らげる目的で使用されます。

咳が激しく、

「喉が熱い」
「冷たい飲み物が欲しい」
「体がほてる」

といった症状がある場合、石膏が重要な役割を果たします。

麻黄には発散する力がありますが、石膏が加わることで、必要以上に体を温める方向へ傾かないよう調整されているのです。

麻杏甘石湯との違い

五虎湯と最も似ている処方が、麻杏甘石湯です。

どちらも、

・激しい咳
・喘鳴
・熱感
・発汗
・喉の渇き

などに用いられます。

使い分けの一つの目安になるのが「痰」です。

麻杏甘石湯は、肺の熱による咳や喘鳴が中心で、痰がそれほど多くない場合にも用いられます。

一方、五虎湯では、

・痰が多い
・粘って切れにくい
・気管支の炎症が長引いている

といった症状がより目立つ場合に選ばれることがあります。

桑白皮が加わっていることで、痰と炎症への対応が強化されていると考えると分かりやすいでしょう。

小青竜湯との違いは「冷え」と「熱」

咳に使われる漢方薬として、小青竜湯もよく知られています。

しかし、五虎湯とは体の状態がほぼ反対です。

小青竜湯が向いているのは、

・透明で水っぽい痰
・サラサラした鼻水
・くしゃみ
・寒気
・冷えると悪化する

といった「冷え」と「水分停滞」が目立つタイプです。

一方、五虎湯では、

・熱感が強い
・喉が渇く
・粘り気のある痰
・激しい咳や喘鳴

が目立ちます。

同じ「咳」という症状でも、冷えているのか熱を持っているのかで、処方は大きく変わるのです。

麦門冬湯との違いは「痰の有無」

もう一つ、咳に使われる代表的な漢方薬が「麦門冬湯」です。

麦門冬湯は、喉や気道が乾燥し、

・カラカラした空咳
・痰がほとんど出ない
・喉に違和感がある
・咳き込みが続く

といった状態に用いられます。

つまり、

「粘った痰を伴う熱い咳」なら五虎湯。

「乾燥して痰の少ない空咳」なら麦門冬湯。

という違いが一つの目安になります。

咳は「痰の性質」を見ることが大切

漢方で咳の処方を選ぶとき、非常に重要なのが痰の状態です。

例えば、

・透明で水っぽい
・黄色く粘っている
・痰がほとんどない
・量が多い
・切れにくい

こうした違いには、体の中で起きている状態が反映されていると考えます。

また、熱感や寒気、口の渇き、発汗の有無なども重要な手がかりになります。

「咳があるから咳止め」という単純な選び方ではなく、咳がどのような性質なのかを細かく見極めることが、漢方選びでは大切なのです。

強い息苦しさがある場合は早めの受診を

五虎湯は咳や喘鳴に用いられる漢方薬ですが、息苦しさが強い場合や、呼吸が速い、唇が紫色になる、高熱が続くなどの症状がある場合は、自己判断で漢方薬だけに頼るべきではありません。

肺炎や重い喘息発作など、緊急の治療が必要な可能性もあります。

また、五虎湯には麻黄や甘草が含まれるため、持病や服用中の薬によっては注意が必要です。

使用する際は、医師や薬剤師などの専門家に相談することが大切です。

まとめ

五虎湯は、麻杏甘石湯に桑白皮を加え、熱を帯びた激しい咳や喘鳴、粘り気のある痰に対応する漢方薬です。

特に、

・激しい咳
・ゼーゼー、ヒューヒューする
・熱感がある
・汗をかきやすい
・喉が渇く
・痰が粘って切れにくい

といった状態が一つの目安になります。

麻杏甘石湯より痰や炎症が目立つ場合には五虎湯、透明で水っぽい痰と冷えがあれば小青竜湯、乾いた空咳なら麦門冬湯というように、咳の性質によって漢方薬は使い分けられます。

咳そのものだけを見るのではなく、「熱いのか、冷えているのか」「痰はどのような状態なのか」を丁寧に観察する。

それが、自分に合った漢方薬を選ぶための大切なポイントなのです。

西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。

自分の症状にどのような漢方薬が合っているか、漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦(臨床歴20年)

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦(臨床歴20年)

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
どうぞお一人で悩まずに、気軽にご相談ください。

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