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漢方偉人伝 喩昌(ゆしょう)
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 喩昌(ゆしょう)」を公開しました!
【中国医学史の巨人】喩昌 ― 医に“愛と倫理”をもたらした清朝の名医
中国清朝時代、一人の医師が医学界に革命をもたらしました。
その名は――喩昌(ゆしょう)、字は嘉言。
彼は単なる名医ではなく、医の在り方そのものを変えた人物として知られています。

◆ 皇族の血を引く異才、医の道へ
喩昌は明朝の皇族の血を引く家に生まれました。
しかし、明の滅亡と清の成立という激動の時代に巻き込まれ、
姓を変えて身を隠すことを余儀なくされます。
若い頃は儒学を学び、官僚を志しましたが、
ようやく45歳で科挙に合格した時には、すでに時代が変わっていました。
明の滅亡を目の当たりにした喩昌は、人生の意味を見つめ直し、
50歳で出家。仏門での修行を通じて「医は慈悲の実践である」と悟ります。
数年後に還俗し、医師として新たな人生を歩み始めました。
◆ 貧しき者を救う慈悲の医師
喩昌の医術は瞬く間に評判となり、
その名声は庶民から貴族まで広がりました。
彼は治療を施す際、貧富の差を一切問わず、
農民には薬代どころか生活費まで包んで渡したと伝えられています。
また、患者にはこう語りかけていたそうです。
「薬を煎じる前に、必ず中身を確かめなさい。」
これは、薬そのものを“命の糧”と考え、
治療に対する慎重さと感謝を忘れないよう説いた教えでした。
◆ 医学書『医門法律』に込めた理念
喩昌の最大の功績は、著書『医門法律』です。
この書物は、医師の行動規範と倫理を「法」と「律」に分けて示した、
中国医学史上初の医の倫理書とも呼べる内容でした。
彼は、当時の医師たちの技術不足や利己的な診療態度を憂い、
「医は仁にして愛なり」という理念を掲げました。
特に有名なのが、彼が提唱した**「医者篤於情(医者は情に篤くあれ)」**という言葉です。
これは、儒教の「仁愛」と仏教の「慈悲」を融合させたもので、
現代の“患者中心の医療”に通じる思想といえるでしょう。
◆ 医食同源と生活の知恵
喩昌はまた、脾胃(消化器)の重要性を説いた医師としても知られています。
彼は仏教の「午後の断食」の思想を取り入れ、
「午後は陽気が衰えるため、食事を控えるべき」と指導しました。
これは、現代の時間栄養学(時間帯による代謝効率の違い)にも通じる考え方であり、
彼の医学的洞察の深さを物語っています。
◆ 最期まで静かに、医の道を貫く
喩昌は80歳を迎えたある日、囲碁の対局中に静かに息を引き取りました。
その生涯はまさに「医は仁術」という言葉を体現した人生でした。
彼の残した教えは、
「医学は技術である前に、人を思う心である」――
その信念が、現代にも確かに息づいています。
西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
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この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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