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漢方偉人伝 張登(ちょうとう)
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 張登(ちょうとう)」を公開しました!
張登 ― 舌診を体系化し東洋医学に新たな道を拓いた医師
舌を見るだけで病気を診る「舌診」の誕生
舌を見るだけで病気の種類や重さが分かるとしたら、あなたは信じるでしょうか。
中国医学において、この「舌診(ぜっしん)」という診断法を理論化・体系化したのが、明末清初に活躍した医師・張登(ちょうとう)です。
彼は字を誕先といい、1668年に『傷寒舌鑑(しょうかんぜっかん)』を著し、東洋医学の診断学に大きな革命をもたらしました。

『傷寒舌鑑』の画期的な内容
従来の『傷寒論』では、舌に関する記述はごく簡潔なものでした。
張登はこれを補い、患者の舌の色・形・苔(たい:舌の表面の状態)を詳細に観察することで、病気の性質や進行度を把握できると説きました。
『傷寒舌鑑』では、舌の状態を以下のように分類しています:
- 白苔
- 黄苔
- 黒苔
- 灰色
- 紅色
- 紫色 など、合計8種類
さらに、これらの色や厚み、湿り具合、苔の分布などが何を意味するのかを明確に説明しました。
例えば、白苔は冷えや初期の病を、黄苔は熱性疾患を、黒苔や灰色は重症化を示すなど、舌の観察を通して病状の深さを判断する体系を築いたのです。
120枚の舌図と処方の対応
『傷寒舌鑑』には、なんと120もの舌図が掲載されています。
それぞれの図には、舌の色や質感、苔の形態などが細かく描かれ、視覚的に理解しやすい構成になっています。
また、各舌の状態に応じた治療方針や処方が併記されており、臨床現場で即座に活用できる実用的な医学書として高く評価されました。
この点において、張登は単なる理論家ではなく、観察と実践を重んじる医師であったことがわかります。
日本の医学界への影響
『傷寒舌鑑』は中国国内のみならず、日本の医学界にも大きな影響を与えました。
江戸時代には写本が広く出回り、当時の漢方医たちが舌診の重要性を学ぶ上での貴重な資料となりました。
舌を観察する診断法は、今もなお日本の漢方臨床で重視されており、その源流が張登の研究にあるといっても過言ではありません。
『四庫全書』に収録された名著
清朝政府による最大の文献事業『四庫全書』にも、『傷寒舌鑑』は正式に収録されました。
これは国家的にその医学的価値が認められた証でもあります。
舌診という一見地味な観察法をここまで体系化し、後世にまで影響を与えた功績は、まさに医学史に残るものといえるでしょう。
まとめ
張登は、舌の色や質感といったわずかな変化から、体の内側で起きている異変を読み取る「舌診学」の礎を築いた人物です。
その研究は、現代の東洋医学や臨床漢方にも深く受け継がれています。
彼の目がとらえた“舌の言葉”は、今もなお、医の現場で静かに語り続けています。
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この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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