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漢方偉人伝 汪昂(おうこう)

「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 汪昂(おうこう)」を公開しました!

汪昂 ― 一冊を64回出版した中国医学史上の天才編集医家

文学者から医学者への転身

汪昂(おうこう、1612–1699)は、明末清初に活躍した安徽省出身の学者であり、中国医学史上「最も成功した医学書作家」と称される人物です。
彼は元々文学者として出発しましたが、30歳で医学の道へと転じました。

その理由は、「医術は世の中で最も人々の役に立ち、日常生活に欠かせない学問である」という信念に基づくものでした。
汪昂にとって医学とは、単なる専門技術ではなく、“人々の生活を支える知恵”そのものであったのです。

誰にでも読める医学書を

汪昂の最大の成功要因は、医学を“専門家だけの学問”に閉じ込めなかったことにあります。
彼は「上は宰相から下は婦女子まで、誰にでも理解できる医書を」との理念のもと、
文章表現や注釈の方法を工夫し、難解な内容を平易な言葉で伝えました。

当時としては珍しく、書名ページにわかりやすい要約を記載し、
本文には読者が学びやすいように図表や実例を多く取り入れました。
その結果、医師だけでなく、家庭で健康を守りたい一般人にも広く読まれるようになったのです。

出版戦略の天才 ― 現代的マーケティングの先駆け

汪昂は、今でいう「出版マーケティング」の先駆者でした。
本の巻末に分野別広告を掲載し、読者の関心に合わせた“量身定制(オーダーメイド)広告”を展開しました。
さらに、読書環境を考慮し、船上や馬車の中でも読めるよう軽量で携帯性の高い装丁を採用。
「いつでも、どこでも学べる医書」というコンセプトを徹底しました。

まさに、17世紀にして現代的な出版戦略を実践していた人物だったのです。

『本草備要』― 明快で実践的な薬学書

汪昂の代表作『本草備要(ほんぞうびよう)』は、402種の薬物を収録した薬学書であり、
その特徴は「誰にでも読めること」「すぐに使えること」にありました。

薬物の効能や使用法だけでなく、宋徽宗の寵妃の病を“一文銭の薬”で治した逸話など、
印象的な物語を多く盛り込み、読者の興味を引く工夫が随所に見られます。
学問としての厳密さと、一般読者への分かりやすさを両立させた点が、汪昂の真骨頂といえるでしょう。

医学教育への永続的な影響

汪昂のもう一つの代表作『医方集解(いほうしゅうかい)』は、
古今の名方を収録した臨床医のための実践的処方書です。
驚くべきことに、そこに収められた処方の約半数が、
現代中国の方剤学(漢方薬理論)の教科書にも採用されています。

つまり、彼の著作は単なる古典ではなく、今も生き続ける実践医学の源泉なのです。

「学問を人のために」

汪昂の生涯を貫いた信念は、「学問は人の役に立ってこそ価値がある」というものでした。
その思想は、明快な文章、実用的な構成、そして温かい人間味あふれる語り口に表れています。

出版という手段を通して、医学の知を社会に広く届けた汪昂。
彼はまさに、**医と文化を結びつけた“知の編集者”**でした。


西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
自分の症状にどのような漢方薬が合っているか漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦(臨床歴20年)

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦(臨床歴20年)

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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