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漢方偉人伝 郭志邃(かくしすい)
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 郭志邃(かくしすい)」を公開しました!
郭志邃 ― 刮痧治療を体系化した清朝初期の革新医家
痧症が流行した時代に生まれた革新的な医学体系
清朝初期、中国では「痧症(さしょう)」と呼ばれる感染症が各地で流行し、特に1674年には広範囲で多くの人々が苦しんでいました。
当時は有効な治療法が限られ、命を落とす例も珍しくありませんでした。
この困難な時代に登場し、痧症の治療法に革命を起こしたのが、浙江省嘉興出身の医学者 郭志邃(かくしすい、字・右陶) です。
彼は、古典医学の知識に独自の臨床経験を重ね、痧症治療の理論と実践を新たな次元へと押し上げました。
『痧症玉衡』三巻 ― 刮痧治療の基礎を築いた名著
郭志邃の代表作『痧症玉衡』は、痧症の発生部位に応じた治療法を三つに分類し、それぞれに最適な治療を提示した画期的な医学書です。
① 皮膚表面の痧には「刮痧法」
銅銭(古い中国の貨幣)に香油をつけ、
背中や胸部を一定方向に擦り、皮膚表面の痧を外へと発散させる方法です。
現代でも東アジアの民間療法として人気があり、
「グアシャ」として世界中でも知られるようになった療法の源流ともいえます。
② 血液内の痧には「放痧療法」
より深部に入り込んだ痧には、小さな刺絡(少量の出血)を行い、
血の滞りを取り除く方法を提案しました。
これは当時としては高度な診断眼が求められる治療法で、
患者の状態を慎重に見極める必要がありました。
③ 内臓の三陰経(肝・脾・腎)には「薬物治療」
胃腸・肝・脾・腎など、内臓に影響する痧については、
漢方薬を用いて内側から調整。
体質と症状に応じて薬物を選び、
外治と内治を組み合わせたバランスの良い治療体系を構築しました。
④ 重篤例には三法併用
症状が重い場合には、刮痧・放痧・薬物治療を組み合わせて用いることも提案。
現代でいう「総合治療」に近い考え方で、
理論と実践の両面で非常に先進的でした。
理論と実践が融合した実用書としての価値
『痧症玉衡』には多数の臨床例が記載され、治療過程や結果が明確に示されています。
単なる理論書ではなく、実践を重視した“使える医学書”として高く評価されました。
書物は広く流通し、後の刮痧療法の発展に絶大な影響を与え、
今日の「グアシャ治療」の礎を築いた人物として郭志邃の名は語り継がれています。
失われた名著『治痧要略』
郭志邃はもう一つ、『治痧要略』という著作も残しましたが、残念ながら現代には伝わっていません。
もし現存していれば、痧症治療の体系はさらに深く理解できたことでしょう。
それでも『痧症玉衡』の価値は揺るぎなく、
彼の学術は中国医学史に確かな足跡を残しました。
西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
自分の症状にどのような漢方薬が合っているか漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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