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漢方偉人伝 戴天章(たいてんしょう)

「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 戴天章(たいてんしょう)」を公開しました!

清朝初期の温病学を切り開いた名医・戴天章

〜疫病と闘い続けた生涯と『広瘟疫論』の革新〜

はじめに

今から300年以上前、清朝初期の中国で、数多くの疫病患者と向き合い、その治療に人生を捧げた医師がいました。
戴天章(たい てんしょう), 字は麟郊。江蘇省南京の出身で、1644〜1722年という激動の時代を生きた医学者です。

彼は当時猛威を振るっていた温病・疫病の治療に深く取り組み、
のちの中医学に大きな影響を与える 温病学の先駆者 として知られています。

温病・疫病と闘い続けた医師

戴天章の医学人生の中心にあったのは、
温疫(流行性の急性熱性病)との戦い でした。

疫病の流行期には、無数の患者を救うため休むことなく治療にあたったと記録されています。
この豊富な臨床経験こそが、彼の医学思想を形づくる礎となりました。

代表作『広瘟疫論』

戴天章の集大成といえるのが、
『広瘟疫論』(別名:『瘟疫条弁』) です。

この書物では

  • 温疫の発病機序
  • 診断方法
  • 治療方針
  • 具体的な処方
    が体系的かつ実践的にまとめられており、温病学研究の重要な文献として高く評価されています。

革新的な診断法「胸脇細按」

『広瘟疫論』の中でも特に画期的だったのが、
舌診の後に胸脇部を細かく触診する
「胸脇細按(きょうきょうさいあん)」 という診断法です。

これは外感温熱病の診断精度を高めるために戴天章が提唱した方法で、
胸や脇腹の緊張・圧痛・張り具合を細かく観察することで
病気の深さや方向性を把握する という革新的なアプローチでした。

この診断法は後世の医師にも大きな影響を与えています。

温疫の治療法を5分類

『広瘟疫論』では、温疫治療を以下の5つに分類しています。

  • 汗法(発汗で邪気を外へ追い出す)
  • 下法(腸を通して排出し邪を下す)
  • 清法(熱毒を冷まし清める)
  • 和法(体のバランスを調和させる)
  • 補法(消耗した気血・津液を補う)

これらの治療方針の適応範囲は明確に整理され、
互いにどのように組み合わせるべきかも記されており、
後の温病学派にとって大きな道標となりました。

温病学発展の承前啓後となった人物

戴天章の研究と実践は、
清代温病学派の基礎そのもの と言えるほど重要な位置を占めています。

歴代の温病学者たちは彼の理論を踏まえて新たな研究を発展させ、
現代の中医学に続く温病学体系の基盤を築きました。

まさに「承前啓後(過去を受け継ぎ未来を開く)」の役割を果たした人物といえるでしょう。


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この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦(臨床歴20年)

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦(臨床歴20年)

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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