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漢方偉人伝 呉謙(ごけん)
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清朝皇帝が編纂を命じた『医宗金鑑』
中国史上初の統一医学教材が誕生するまで
はじめに
清朝中期、皇帝の命により全国の医学書を集めて編纂された
中国史上初の国家主導医学教材『医宗金鑑』。
その中心となったのが名医・呉謙でした。
本記事では、『医宗金鑑』がどのように誕生したか、
そしてなぜ後世まで影響を及ぼしたのかを解説します。

医学書が混乱していた時代背景
『医宗金鑑』が作られた背景には、当時の医学界の深刻な混乱がありました。
清朝初期は
- 古医書は難解で誤りも多い
- 後世の医書は理論が入り乱れて混乱している
- 医師たちは何を基準に学ぶべきか分からない
という、「医書駁雑、人不知宗」と表現される状況でした。
この混乱を憂慮した乾隆帝は、
国家として正統な医学体系を作る必要性 を強く感じていました。

皇帝主導の大事業「医書館」の設立
乾隆帝は全国の医籍を収集し、
その精華をまとめた権威ある医学典籍の編纂を命じます。
そのために朝廷は専門機関 「医書館」 を設立。
- 統括:皇子・弘昼、大学士・鄂爾泰
- 主編:呉謙
- 編集官:14名
- 総勢:65名の大規模チーム
という国家プロジェクトとして進められました。
全国から医学書を集め、分類・整理・校勘を行うという、
かつてない規模の医学編集事業がスタートしたのです。

主編者・呉謙の理念
呉謙は康熙〜乾隆期に活躍した名医であり文人。
彼は医学書の難解さと誤謬を深く憂慮し、次の方針を掲げました。
- 初心者にも分かりやすい内容
- 歴代の学説の長所を幅広く採用
- 派閥を排除した中立的な構成
- 歌訣・韻文を多用した覚えやすい体裁
専門家だけでなく、医師を志す者にも理解できる「標準教科書」を目指したのです。
3年の歳月をかけて誕生した『医宗金鑑』
三年に及ぶ編纂を経て、乾隆七年(1742年)、
ついに 『医宗金鑑』全90巻・15部門 が完成。
内容は中医学のあらゆる分野を網羅しています。
- 内科
- 外科
- 婦人科
- 小児科
- 眼科・耳鼻科
- 鍼灸
- 傷寒・金匱学
- 方剤・薬物学
まさに中医学百科全書と呼べる大作であり、
特に呉謙自身が執筆した**『傷寒論』『金匱要略』の注釈**は高い評価を受け続けています。

まとめ
『医宗金鑑』は、
清朝皇帝の意思と学者たちの努力が結集し誕生した 国家標準の医学体系 です。
- 医学の混乱を整理
- 権威ある統一教材を確立
- 初心者から専門家まで学べる体系を構築
という革新的な役割を果たし、
その影響は現代の中医学教育にも及んでいます。
西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
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この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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