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漢方偉人伝 黄宮繡(こうきゅうしゅう)
「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 黄宮繡(こうきゅうしゅう)」を公開しました!
本草学と脈診を革新した名医
清代医学者・黄宮繡の医学思想
清朝中期に現れた理論派の名医
18世紀の中国、漢方医学の世界に大きな転換をもたらした医師がいました。
黄宮繡(こう・きゅうしゅう)、字を錦芳という清朝中期の医学者です。
1720年に生まれ、1817年に没するまで97年という長寿を全うしました。
儒医の家系に生まれ、幼少期から経学・史学・医学に通じた豊かな学識を備えていた人物です。
黄宮繡が医学史に名を刻んだ理由は、
単に臨床に優れていたからではなく、
漢方医学を理論的に再構築したことにあります。

『本草求真』― 生薬の本質を見抜く視点
黄宮繡の最大の業績の一つが、1769年に刊行された
**『本草求真』**です。
この書は全10〜12巻に及ぶ大作で、
従来の本草書とは一線を画した内容でした。
それまでの本草学は、生薬の効能を列挙することに重きが置かれていましたが、
黄宮繡はそこに疑問を持ちました。
彼が重視したのは、
「その薬が、体内のどこに、どのように作用するのか」
という点です。
帰経理論を軸とした体系化
『本草求真』では、生薬を次の7つに分類しています。
- 補剤
- 収澀剤
- 散剤
- 瀉剤
- 血剤
- 雑剤
- 食物
それぞれについて、
気味・作用臓腑・機能・禁忌・配合を詳細に解説しました。
過去の文献に見られる曖昧な記述や、
根拠の乏しい説を整理・削除し、
薬の本質を見極める姿勢が貫かれています。
『脈理求真』― 脈診を「技」から「理論」へ
もう一つの重要な著作が、
**『脈理求真』**です。
この書では、脈診を単なる経験技術ではなく、
理論に基づく診断法として再構築しました。
胃気を脈の根本とする考え
黄宮繡は
「脈に神があることを貴ぶ」
という考えを示し、
脈象の根本には胃の気があるとしました。
また、
「脈証互参」
という診断原則を提唱します。
これは、
脈だけを見るのではなく、
症状・体質・経過と合わせて総合的に判断するという考え方です。
現代の漢方診療にも通じる、非常に実践的な視点といえるでしょう。
少数精鋭の処方という実用主義
黄宮繡の医学のもう一つの特徴は、
薬を使いすぎないことでした。
- 使用する生薬は約300種に厳選
- 処方は8〜12味を基本
- 五臓の弁証と気血の調和を重視
薬を重ねれば効くという考えを戒め、
身体の理に沿った、無駄のない治療を追求しました。
これは、
「効かせる漢方」ではなく
「整える漢方」
という思想に通じます。
東アジア医学に与えた影響
黄宮繡の著作は、中国国内にとどまらず、
日本を含む東アジア全域の漢方医学に大きな影響を与えました。
理論と臨床を結びつけたその姿勢は、
現在も研究者や臨床家に参照され続けています。
経験に頼りすぎず、
理論に偏りすぎず、
その中間を丁寧に歩んだ医学者――
それが黄宮繡でした。

西漢方薬店ではオンラインでの漢方相談をおこなっております。
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漢方の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー
西 智彦(臨床歴20年)
鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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