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漢方偉人伝 朱沛文(しゅはいぶん)

「西漢方薬店 漢方チャンネル」に「漢方偉人伝 朱沛文(しゅはいぶん)」を公開しました!

漢方と西洋医学をつなごうとした男

朱沛文が挑んだ「見えない理」と「見える物」の融合

漢方の「気」や「臓腑」といった見えないエネルギーの理論と、
西洋医学の解剖学という目に見える世界。

この全く異なる二つを、
もし百五十年前に本気で組み合わせようとしたら、
一体どんな反発と可能性が生まれたのでしょうか。

今回は、十九世紀の中国でその難題に真正面から挑んだ
先駆的医学者 朱沛文 について解説します。


清代後期に現れた統合医療の先駆者

朱沛文は清代後期に活躍し、
中西医匯通派と呼ばれる流れのパイオニアとして知られています。

彼が生きた時代は、

  • 中国伝統医学が成熟期を迎える一方
  • 西洋医学が急速に流入し始めた

まさに医学の価値観が大きく揺れ動く変革期でした。

蒋宝素や陸懋修と同じく、
朱沛文もまた「時代の分かれ目」に立った医師の一人だったのです。


中医学は「理」、西洋医学は「物」

朱沛文の思想の核心は、
非常に冷静で合理的な見極めにありました。

彼は次のように考えます。

  • 中医学は「理」に強い
    病の成り立ち、全身の関係性、理論的な解釈に優れる
  • 西洋医学は「物」に強い
    解剖学や臓器の構造といった実体の把握に長けている

どちらか一方が正しいのではなく、
得意分野が違うだけだと見抜いたのです。

だからこそ朱沛文は、
排他的に否定し合うのではなく、
「組み合わせる」という選択をしました。

この姿勢は、現代で言う
統合医療の発想そのものと言えるでしょう。


『華洋臓象約纂』という画期的な試み

その思想の集大成が、
一八七五年に著された 華洋臓象約纂 です。

この書物の特徴は非常に大胆でした。

  • 西洋医学の解剖図を多数引用
  • 伝統的な「臓腑」の概念と
  • 西洋医学の「内臓構造」を徹底比較

単なる紹介ではなく、
両者を真正面から突き合わせて検討したのです。

後に思想家・章太炎によって
中西臓腑図象合纂
と改題され、広く世に知られるようになります。


「物」を否定せず、「理」を捨てない

朱沛文が特別だった理由は、
西洋医学を盲目的に称賛したわけでも、
漢方を守るために拒絶したわけでもない点にあります。

  • 解剖学という「物」を正面から認め
  • それを漢方の「理」とどう接続するか

この問いに真剣に向き合ったのです。

見えるものを受け入れながら、
見えないものの価値も失わない。

その姿勢が、医学の新しい扉を開きました。


現代に続く朱沛文の問い

朱沛文が投げかけた問いは、
実は今も私たちの足元にあります。

  • 検査数値だけで人を診ていないか
  • 理論だけで現実を見失っていないか

「理」と「物」の両立は、
今なお医学にとっての永遠のテーマです。

百五十年前にその可能性を示した朱沛文は、
間違いなく時代を先取りした医師だったと言えるでしょう。


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この記事を書いた人

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 西 智彦(臨床歴20年)

西漢方薬店 漢方処方アドバイザー 
西 智彦(臨床歴20年)

鍼灸師、マッサージ師の国家資格と医薬品登録販売者の資格を持ち、学術発表症例発表実績として第24回経絡治療学会学術大会東京大会『肝虚寒証の症例腰痛症』等、また伝統漢方研究会会員論文集の学術論文からメディア取材まで幅広い実績もあります。
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